今後10年の国際観光市場の成長予測、世界経済を上回るペースに、2020年は東京五輪などが世界市場を押し上げ(トラベルボイス 2020年1月22日)https://www.travelvoice.jp/20200122-144918

UNWTOが2020年の国際観光客数を前年比3%〜4%で、「今後10年連続で世界の観光需要は成長する」と予測。2019年の成長率は中東の8%が最大。アジア太平洋は5%に鈍化した。中国のアウトバウンド旅行者は14%増だったが、消費額は4%減となったという。観光産業は世界経済を上回るペースで成長しているが、地域差が顕著になっている点も見据えなければならない。

【ポイント】国連世界観光機関(UNWTO)の「今後10年の世界の観光需要と傾向分析」によると、今後10年連続で世界の観光需要は成長すると予測されている。

2019年の国際観光客数はいずれの地域でも増加したが、イギリスのブレグジット、トーマス・クックの破綻、特定地域の社会的混乱、世界経済の成長鈍化などから、大きな伸びを示した2017年と2018年と比較すると、その成長率は緩やかなものとなった。この影響は先進国、特にヨーロッパとアジア太平洋で見られた。

2020年の国際観光客数について、前年比3%〜4%の成長率を予測。回答者のうち47%が前年よりよくなると答え、前年と同じレベルも43%となった。今年は、東京オリンピック・パラリンピックなどの大規模スポーツ大会、ドバイEXPO2020などの文化イベントなどが、旅行市場に好影響を与えると期待されている。

UNWTOのズラブ・ポロリカシュヴィリ事務局長は、「不確実性と不安定性の現代において、観光は信頼できる経済分野であり続ける」とコメント。最近下方修正された世界経済の予測、国際貿易の緊張、社会不安、地政学的不確実性を背景に、「観光産業は世界経済を上回るペースで成長していく。単なる成長ではなく、よりよい方向に成長することが大切だ」と強調した。
UNWTOは「責任ある成長」の必要性を提唱しているが、UNWTOが定めた2030アジェンダと17の持続可能な開発目標(SDGs)を達成するには、10年しか残されていないとの認識を持っている。

2019年の地域別の国際観光客数を見てみると、最も成長率が高かったのは中東で、世界平均の倍となる8%。アジア太平洋の成長率は鈍化したものの、5%と引き続き世界平均を上回った。
ヨーロッパは、前年よりも低い4%となったものの、観光客数では引き続き世界トップで7億4300万人で全体の51%。南北アメリカ2%。アフリカ4%。北アフリカ9%。サハラ砂漠以南は1.5%と、地域によって差が大きくなった。

世界経済の鈍化にも関わらず観光消費は成長。フランスのトップ10市場の観光消費が11%増となり、ドル高の影響でアメリカも6%増となった。
一方で、ブラジル、サウジアラビアなどいくつかの新興国では、観光消費は低下。中国ではアウトバウンド旅行者は14%増となったものの、消費額は4%減となった。

UNWTOは、国際観光で年間10億米ドル以上稼ぐ国の数は1998年比で倍になった。「私たちが直面する課題は、できるだけ利益を共有すること。誰も取り残さないこと。各地方コミュニティーでの前向きな変革をリードするとともに、雇用創出、地域活性化、文化保護を支援していく」と述べている。