関西観光本部 森 健夫事務局長

一般財団法人関西観光本部は、関西の10府県と4政令市、経済団体、観光団体、事業者、国の地方支分部局などが参画し、関西全域へのインバウンド誘客する、関西唯一の「広域連携DMO」として、2017年4月に設立された団体です。

主な取り組みには、海外プロモーションとインバウンド受け入れ環境の整備、インバウンド向けICカード「KANSAI ONE PASS」や、関西広域で使える「KANSAI Wi-Fi」アプリ、地方都市向けの機械翻訳による「コールセンター」、そして「関西文化の日」などの文化振興の取り組みがあります。

全国の2017年の訪日客は2869万人のうちアジアが2434万人(84.8%)。関西では1207万人のうちアジアが993万人(82.3%)になり、アジアの観光客が多い。また、関西といっても大阪府の1111万人と京都府の742万人(宿泊客数は大阪府1171万人、京都府559万人)。ほとんどが大阪市と京都市に集中しています。アジア比率が高いといっても京都府は42%、他は80%近い数字で一律ではありません。

旅行消費額は、全国の4兆4千万円に対し、関西は1兆8千万円です。

政府の2020年の目標、訪日客4000万人は関西で1800万人になり、「インバウンドで地域経済を活性化する」という目標に向かっていくのが関西観光本部です。

2025年には万博がやってくる可能性があります。また、2020年は東京オリンピックがあり、2019年にはラグビーW杯、2021年はワールドマスターズゲームズ関西とスポーツ競技が目白押しですが、これらの行事で訪日客が自然と増加するというのは幻想で、これらのチャンスに日本の良さをしっかりPRすることだと捉えています。

また2021年に「文化庁」の京都移転が完全に完了します。この文化庁移転も「文化」と「観光」をつなげる重要な仕事です。

関西広域で取り組む必要性は、「世界に通じる京都」と「アジアに人気の大阪」というコンテンツを中心にしながら、関西一円にいかに巡ってもらうかという点にあります。京都・大阪に来たお客様をプラスワン、地域を巡ってもらう戦略を考えているところです。

訪日客の集中による問題も懸念しています。訪日客にとっては「宿泊施設の確保が困難」であり「混雑による満足度が低下」する懸念。住民が直面する問題として「違法民泊も含めた住環境の悪化」や「公共交通機関の混雑」などへの懸念。そして“熱狂のあとに残るもの”が、「訪日客の減少」や「住環境の荒廃」であってはならないと考えています。

とはいっても、関西全体をどのように振興していくのか? 関西全体の名の下に始まる悪平等を排しつつ「京都、大阪を巻き込んだ関西ブランドを確立」、「広域連携団体間のプラスワン連携」や「海外の都市とのプラスワン連携」にも取り組みたいと考えています。