8日は、奈良観光サロンに参加して柿の葉ずし『平宗』の
平井宗助社長のお話をお聞きしました。
http://www.hiraso.jp


【 要 旨 】
柿の葉ずしの『平宗』は、江戸時代末期、文久元年(1861年)に、
奈良は吉野上市村にて創業された歴史を持っておられます。
(幕末、天誅組が活躍した頃の創業です)

江戸時代中頃より夏祭りの「ごっつお」(ご馳走)として吉野の家庭で作られていた柿の葉ずしが、
遠来のお客様に振る舞う吉野の名物として商品化されていったようです。

熊野の鯖は吉野の山間では貴重な海の幸でした。
腐らないように浜塩をされて「しょっかろう」なった鯖をおいしく食べられるように、
薄く切ってご飯に載せ、身近にあった柿の葉で包んだものが『柿の葉ずし』です。
すし桶に入れ重石をして2〜3日、
サバの塩気や旨味がご飯の甘みと馴染むことでまろやかで優しい味になります。
さらに柿の葉の香りとタンニンが鯖の生臭さを消し、殺菌作用もはたらく保存食となります。
この過程の乳酸発酵が独特で芳醇な味わいを作るようです。

そもそも寿司は保存食の”なれ鮨”として生まれます。
それが生食の魚が食べられるようになり、江戸前寿司のような形のものに変化していきます。
山深い吉野の里等には昔ながらの”なれ鮨””柿の葉ずし”が残っていたそうです。
谷崎潤一郎も“贅沢なもの”として絶賛しています。

(説明を受けてなるほどと思うとともに、
保存・流通の発展により、人の食味や嗜好も変化していることを実感しました。
また”なれ鮨”を作るためには、手間ひまがかかっていることも知りました。)

平宗では、奈良県産のお米”ヒノヒカリ”を使い、
鯖は11〜12月に水揚げされる脂ののったものを厳選するそうです。
鯖は、ある程度大きくならないと脂がのらず、最近は中韓の漁船も進出するため漁獲高も減っています。
またノルウェイ産の鯖は脂がのりすぎて旨味がでないそうです。
柿の葉も8月以降は固くなるので、6〜8月に取り入れたものを使用するなど
こだわりを持って作られています。


今や「吉野のごっつお」は大阪や東京のスーパーでも購入できるようになり、
発酵という部分はほぼその面影はなくなり、単に「柿の葉にくるまれた押し寿司」となってしまい、
本来の柿の葉ずしの価値が伝わりにくくなったとのことでした。
また、柿の葉ずしの具は鯖と鮭が多いですが他の具材も多いようです。
和歌山県九度山町の柿の葉ずしは、シイタケ、かまぼこ、エビなど最も具材が多い地域とのお話もありました。

昨日は、一般に販売ている旨み調味料で調理された柿の葉寿司と
無添加で、麹菌によって発酵された柿の葉寿司「こころ」を食べさせていただきました。「こころ」の柿の葉ずしは、甘みがあり、奥深い味わいだと感じました。

食の原点の一つ「寿司」の歴史と味わいを学ぶ貴重な時間になりました。
平井社長、良いお話と美味しい柿の葉ずしをありがとうございました。

河瀬直美監督の「つつむという優しい文化」の映像もご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=TYcxh70z0J0