宿泊業界が「大きな脅威」に対抗するには? OTAやアマゾンに対抗するための議論をまとめた【外電】(トラベルボイス 2019年9月17日)https://www.travelvoice.jp/20190917-133436

ホテルがOTAに顧客を奪われ、アマゾンやアリババまでも宿泊マーケットに参入してきた。ホテル産業が進む道は、客室を「一泊ではなく、一時間単位で販売」し、レストラン、スパ、会議スペースなど、15~20種類のプロダクトを組み合わせ、予約から決済までを一元管理するリテール業務のシステムを採用することだという。

【ポイント】ホテルがオンライン旅行代理店(OTA)に、顧客の多くを奪われるようになって久しい。エアビーアンドビーなどシェアリングエコノミー各社も、競争に加わっている。
アマゾンやアリババなど、テクノロジー企業までもが宿泊マーケットに参入。潤沢な予算を持ち、誰よりもeコマース戦略に長けた巨大企業を相手に、市場シェアが奪われることが危惧される。
2019年6月下旬にミネソタ州で開催された「ホスピタリティ産業テクノロジー見本市」でおこなわれたセッションで、議論の前提として示された見解だった。
OTAが登場した頃、ホテル側は「インターネット仲介業者」に客室を売る力があるのか疑問視していた。「ホテルのロイヤルティプログラムは素晴らしく、OTAはとても太刀打ちできない。お客様はホテルと直接話をしたいのだから、ホテルに問い合わせてくる」との意見だった。
2010年頃まで、ホテル業界の幹部たちはOTAと手を組むことを歓迎していたという。ところがOTAは、テクノロジーをうまく活用しながら、旅行者の様々なニーズに応えることに成功。ホテル側は遅れをとった。自社プロダクトであっても、販売を他社に任せるようになった時点でお粗末な事態だったといえる。そして今、新たな大変革の波。eコマースを知り尽くしたアマゾンやアリババなどのリテーラーの参入だ。
ホテル産業は、『ホテルはITビジネスじゃない。宿泊を提供し、お客様の顔を見ながら働くサービス業だ。テクノロジーの問題は誰か専門家に任せておけ。我々がフォーカスするべきは目の前のゲストだ』と言い続けてきた』 テクノロジーや技術設計についてあまりにも無知だった。ホテルは、レストラン、ゴルフコース、スパ、会議スペースなど、15~20種類のプロダクトの営業を行っているが、デジタル販売において、それらをまとめて扱う機能がない。それぞれが別のメカニズムで取扱いされているので、煩雑で手間がかかる。消費者は、アマゾンなどの便利な機能に慣れ、どこでも同じような使い勝手を期待するようになった。
リテール業務のシステムを採用すれば、ホテル各社はもっと利用客にアピールするパッケージ商品が造成できる。ロイヤルティプログラム会員との関係強化や、他の流通チャネルにはないプロダクト提供にもつながるだろう。
「ホテルがデジタルプラットフォームを整えれば、客室だけでなく、会議室の4時間利用や、レストラン予約、リムジン手配なども併せて受けられるようになり、OTAとの差別化にもなる」とプライス氏。PMSから脱却することで、「一泊」ずつ売るという固定概念からも解放されると説く。「一泊ではなく、一分単位、一秒単位、あるいは一時間単位で客室を販売してはいけないのか? 今の時代を理解しているリテーラーならば、当然、検討するだろう」。
問題を解決するカギは、複数のAPIを使い、ホテルが扱う様々なプロダクトの予約から決済までを一元管理するシステムにあるとプライス氏は話す。
「しかしここで重要なのは、またテクノロジー企業に任せっぱなしにしないこと。テクノロジーを使うのは我々なのだ。もっと疑問を持って、自分でも情報収集し、要求することが大事だ」と同氏はいう。
※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。