ホテル業界が需要停滞期にできること、飲料部門・MICE・財務の視点から考えた具体策をまとめた【外電】
(トラベルボイス 2020年3月23日)
https://www.travelvoice.jp/20200323-145705

新型コロナの拡大はとどまるところを知らない。
ホテル需要の落ち込みをフォローするため、飲食部門でのデリバリーを進めている。プロが腕をふるう料理をホテル外の顧客に届けるという。
海外から日本への帰国者も増加しているが、空港から自宅までの移動手段がなかったり、宿泊施設がないNEWSも流れている。ホテルといえどもコロナ感染に安全な空間とはいえないのが悩ましい。

【ポイント】
3月17日の「ホテル業界が今できることは? 需要回復期に生まれる新たなトレンド」の続編として「ホテル業界が需要停滞期にできること、飲料部門・MICE・財務の視点から考えた具体策」のレポート。

飲料部門
需要が冷え込んでいる時期、料飲部門では、材料調達について考慮して2~3種類のシンプルなランチやディナーのセット・メニューに絞って提供するのはどうだろう。
信頼できる配達業者の協力を得られるなら、ホテル内レストランの食事をデリバリーするサービスを開始し、「人との接触」を恐れて、外食需要が落ち込んでいる時期のニーズを取込もう。
春節の頃、中国ではフードデリバリーを始めるホテルグループが増えた。ホテルの労働力と食材の在庫を活かし、プロが腕をふるう料理をホテル外の顧客に届けることで、キャッシュフローを支えた。

新型コロナウイルス禍によって、今後、人々の食習慣や味の好みが変わるだろう。
人々は感染拡大が収まった後、衛生面や食習慣にもっと気を配るようになりそうだ。こうした変化を念頭に、ホテルで提供しているメニューを刷新することも大切だ。
需要停滞期は、ホテル滞在中のお客様に、自分の客室で食事したり、レストラン内であっても他の人と離れたテーブルで食べていただくようお願いする場合もある。店内のテーブル・レイアウトも考慮しよう。

会議とイベント
コンベンションホテルは、特に厳しい状況を強いられている。
バルセロナで開催予定だったモバイル・ワールド・コングレス(MWC)やITBベルリンなど、主要な見本市が開催間際にキャンセルされ、影響がどこまで広がるのか想像もつかない。
売上の損失は、ホテルだけでなく地域経済にも大打撃で、この余波は数年先まで及ぶだろう。
国際会議などを含むミーティングやイベント需要が完全に復活するには、他の分野よりも長い時間がかる。このセグメントのホテルは、客室数が多く、会議施設や調理場の装備も大規模なので、もともと団体ビジネスへの依存が大きい。

コンベンションホテルであっても、新しいマーケット開拓に乗り出すのが一案だ。
例えば、オフィスビルや地元の中小企業で社内にスタッフ用のカフェテリアがないところを対象に、食事のデリバリーやデリ商品を訴求するなどが考えられる。ホテルの評判を高めるし、既存の施設や資源を活用した売上増になり、キャッシュフローの助けになる。
コンベンションホテルは外部へのケータリングビジネスにはぴったりなので、需要回復期には、こうしたホテル外での宴会需要を取り込み、売上アップを図ることもできる。

大勢が集まって開催するランチやディナーには、まだ不安を感じている人も多いだろう。
たとえ結婚式であっても、大皿から取り分けるスタイルではなく、個別に用意されたお皿を供する洋食スタイルを取り入れることも検討するべきだ。この方がウイルスによる汚染拡散を防ぐのに効果的だし、料理の無駄も減る。ただし、従業員の人手やコスト負担が大きくならないよう注意が必要だ。

オペレーション
最も重要なのは見通しの予測であり、これが効果的な衛生管理と客室コントロールにつながる。
感染拡大が続いている間は、レベニューマネジャーが、客室稼働率の予測を毎日更新し、これをオペレーション担当部署と共有することでスタッフを適切な人数に抑えたい。またレベニューマネジャーは、フロントデスクおよびハウスキーピング担当部著とも緊密に連絡を取り、無駄なく、必要な客室数を用意できる体制を整えよう。稼働しているフロアを区切ることで、館内の電力などエネルギー節制に役立つ。

感染拡大が収まってきたら、衛生的な環境への関心が高まっている世論を意識し、ヘルス関連サービスの充実に力を入れるべきだ。
例えば、手の消毒液の客室設置、空気清浄システム、室内空気清浄レベルの表示、高品質なベッド、栄養面への配慮、オーガニックフードの提供、空港送迎車両内が清潔で除菌されていること等。こうしたクオリティやサービス向上が顧客の満足度をアップする。

財務
カギになるのは「予測」だ。エネルギー費、人件費、不要不急の出費項目について割り出し、それぞれを最小限に抑える管理手法が大切だ。これがうまく成功するためには、すべての部署からの協力が欠かせない。
人件費については、スタッフの残業時間がなくなるように労務管理し、需要が低迷している時期に有給休暇を取得したり、必修な研修を受けるよう予定を組むことを奨励しよう。

キャッシュフローを維持し、ホテルの営業を続けよう。経済危機や大きな災害にあった時、中小企業が立ち行かなくなるのは、キャッシュフローが破綻するせいだ。
ホテル経営陣と財務担当部署には、以下を参考に、この難題を乗り越えてほしい。
• エネルギー費用の管理は、常にコスト管理の要となる。レベニューマネジメント部からもたらされるビジネスの見通し予測をもとに、客室のエネルギー消費量を事前に推計し調整しよう。客室稼働率が大きく落ち込んでいる間は、使わないフロアは閉鎖し、エネルギー消費量を節制する。
• 財務部は、資材の調達先サプライヤーと交渉し、支払い期限の延長や、一時的な仕入れ削減について交渉する。
• 不動産の賃貸料や、ブランドマネジメント費用の値下げなどの救済措置を模索する。
• 当局によるローン利率削減などの救済策を活用する場合でも、購入するものはオペレーション継続に必要な範囲にとどめておく。

過去の歴史を振り返ると、過酷な状況下でも、ホスピタリティ産業が完全に破壊されてしまったことはない。新型コロナウイルスによって、我々の産業は今、強制停止させられている厳しい状況にあるが、「修復」モードに切り替えて動くことなら、間違いなく可能だ。
中国のホテル各社は、ここまで冷静に構え、需要がストップしている苦境の中でもに頑張ってきた。
こうした姿は、同じく感染拡大の影響が広がる他の地域にとっても、大きな支えになるはずだ。
ホテルグループ各社が、従業員と宿泊客の健康を守るために迅速に動き、さらに最前線に立つ医療関係スタッフを支援するべく、様々な行動を開始している姿には胸が熱くなる。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。