国内通信量、4割増加 外出自粛でデータ通信に停滞懸念
(日経新聞 2020年4月4日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57673980U0A400C2MM8000/?n_cid=NMAIL007_20200404_A

新型コロナの影響で、企業のテレワークや外出自粛での動画配信で、通信量が飛躍的に増加している。
国内通信は、3月末の平日のネット通信量が2月上旬から4割増え、世界の通信量は、1~3月に前年同期の2倍以上を記録したという。
世界中でデータ通信の飽和を回避する動きが出ている。ユーチューブは動画画質を制限し、米ネットフリックスも欧州などで画質を低下させ、通信データ量を25%削減している。
今後もデータ量が増えるのは必至で、通信ネットワークに知恵を絞る必要がある。

【ポイント】
新型コロナウイルスの感染拡大で、国内通信の3月下旬の通信量(日中)は2月比で最大4割増。世界でも同様にデータ通信量が膨らんでいる。
外出自粛でテレワークが広がり、企業の利用と動画配信サービスが増えている。外出抑制に加え、遠隔授業の本格利用が始まれば、通信ネットワークの停滞懸念が強まりそうだ。

データ利用を巡るシンポジウムにおいて、ウェブ講義を円滑に進めるアイデアが披露されたが、参加者からはデータ通信の飽和に対する懸念の声が相次いだ。
全国で小中高大学生は約1500万人いるとされ、新学期にウェブ学習が広がれば、ピーク時に通信回線が停滞するリスクがあるという。3日、国内携帯3社が学生の通信費を一部無料にする方針を発表し、今後データ量が増えるのは必至だ。

既にデータ量は急増している。NTTコミュニケーションズによると、3月23日の週の平日日中のネット通信量は2月上旬と比べて最大4割増えた。
データ配信の米アカマイ・テクノロジーズによると、世界のデータ通信量は1~3月に前年同期の2倍以上となる毎秒160テラ(テラは1兆)ビットを記録した。世界中で在宅勤務や休校が広まり、遠隔での会議や動画視聴の機会が増えたことで、通信量が跳ね上がった。
NTTコムのネットワークは現在、同じ設備を2系統そろえ「現在の倍の通信量にも耐えられる」とする。

しかし足元ではデータ量の増加に伴い、ネットにつながりにくくなる状況が出ている。
背景は、NTTとつながるインターネット接続事業者や企業の社内システムに外部から接続する回線のデータ容量の不足だ。
米マイクロソフトの職場向け協業アプリ「チームズ」は、3月半ばの1週間だけで1200万の利用者が増えた。タワーマンションなど大規模住宅などから、共用ネット回線が混雑し、時間帯により思うようにつながらないとの声があるという。
中外製薬はテレワーク拡大に備え、外部から社内システムへの接続回線を、従来の2500回線から5000回線に倍増させた。セブン―イレブン・ジャパンも急きょ回線を増強した。
世界的にもデータ通信飽和を回避する動きが出ている。「ユーチューブ」は、EUの要請に応じて動画の画質を制限。米ネットフリックスも欧州などで画質を低下させ、通信データ量を25%削減している。

東京都の週末や夜間の外出自粛を要請したことを受け、首都圏中心に国内で在宅で過ごす消費者は一段と増える見通しだ。
新型コロナウイルスの感染拡大収束の見通しが立たない中、ビデオ会議や動画配信などのサービスは伸び続ける。官民挙げて、通信ネットワークの維持に知恵を絞る必要がありそうだ。