旅館のテクノロジー導入はどうあるべきか? 内閣府経済政策フォーラムで議論、観光産業の生産性向上からデジタル化まで(トラベルボイス 2020年1月28日)https://www.travelvoice.jp/20200128-143957

旅館のテクノロジー導入の効果について述べられているが、導入のハードルは高いという。インバウンドの8割を占めるアジアは一気にデジタル化が進んでおり、その影響が観光客の動向にも表れている。「モノ消費→コト消費」からさらに進化し、その瞬間でないと体験できない「トキ消費」、消費そのものに意味を持たせる「イミ消費」が、今後、求められていくようだ。

【ポイント】兵庫県・城崎温泉で12室の旅館を経営し、全旅連青年部でITソリューション開発委員長を務めた柴田氏から「宿屋EXPO」という宿泊施設向けシステムが紹介された。全旅連が神奈川県・鶴巻温泉の旅館、元湯陣屋と共同開発。「このシステムで儲けることは考えておらず、地方の宿泊施設の生産性を向上することが目的」として、全旅連に加盟していない宿泊施設も初期費用や加入手数料など無料で利用できる。

旅館同士が食材や備品、労働力などのリソース交換や助け合いを行えるシステムという。「こうした仕組みを通じて隙間時間を活用した労働を柔軟に供給できれば、生産性はさらに上がるのでは」、「大手チェーンでは繁閑期の異なる施設間でスタッフを行き来させており、このシステム上で個別の施設同士も可能では」という。

訪日外国人向けアプリ「WAmazing(ワメイジング)」が紹介され、「魅力ある観光コンテンツ、情報発信・予約手配・決済がスマホ上でできるオンライン化、交通アクセス」のワンストップサービス。「外国人が地方に行く目的はスキー・スノーボードが1位、温泉入浴が2位。観光庁調査をもとに推計すると2018年のスキー目的の旅行客は95万人、温泉目的は1072万人で着実に増加傾向にあるWAmazingは全国のスキーリゾートの7割以上に当たる280施設と直接契約してリフト券など2000商品をオンライン販売している。全契約施設のアクセス情報を写真入りのブログで丁寧に説明し、各国のgoogleで検索するとトップヒットするSEO対策を行っている。アプリを事前にダウンロードして会員登録すると、日本の22空港の専用機で無料 SIMカードを提供しており、香港、台湾を中心に約27万人が会員登録している。

・「モノ消費→コト消費」からさらに進化し、その瞬間でないと体験できない「トキ消費」、消費そのものに意味を持たせる「イミ消費」が重視された。

・アプリが乱立する状態から、アプリが集約される流れが出てきている。

・かつては勘で行われていた宿泊料金のレベニューマネジメントがテクノロジーで解決できるようになり、宿泊料金の最適化が進んでいる。

・宿泊施設による直販化が強化され、今後はレートパリティー(宿泊利用金の統一化)が進む傾向にある。

・インバウンドの8割を占めるアジアは、日本より一気にデジタル化が進んだ。

・訪日外国人が旅館スタッフから聞いた話や、ガイドブックといった『アナログ』な情報が、次回の訪日旅行に影響する可能性がある。

・多くのIT技術を導入するよりも、少数に絞って導入している旅館のほうが、生産性は明らかに高くなる。ただし導入自体のハードルが高い。

「ITの活用によって裏方の仕事を減らし、接客に余裕を持てることが理想。10室前後の宿泊施設が約70軒ある城崎温泉は、町全体が一つの旅館というコンセプトだが、顧客管理がバラバラで地域全体にどれくらい外国人が来ているかわからない。全施設共通のホテル管理システム(PMS)が使えれば町としてのレベニューマネジメントができ、さらに県単位に広がれば災害対策などにも活用可能では」と述べた。