電車来るまで「あと何分」 多言語対応、五輪へ進化
(日経電子版 2019/4/8)
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO42523030V10C19A3EA4001/

日本企業がインバウンドへの言語対応を急いでいる。
企業は、外国語表記、翻訳、通訳、外国向けブランドの見直しを進めており、鉄道会社は、駅構内のダイヤ表示器や放送の多言語化、遅延などの運行異常のホームページ掲載、駅番号で示す「駅ナンバリング」の導入などが進められている。
ユニークなのは、東京メトロ銀座線の駅構内表示器では、電車の到着時刻の表示でなく「あと何分」という表示を導入したといい、このような表示は海外で一般的だという。
これまで遅れていた外国語表記も、東京五輪を機に導入が加速しそうだ。

【ポイント】
2020年東京五輪に向けて、日本企業が訪日外国人(インバウンド)への言語対応を急いでいる。

マツモトキヨシは20年までに、医薬品や日用品などプライベートブランド(PB)の約2千種類で商品名に英語を併記する。医薬品では英語の説明も増やし、訪日客が店頭で目的の商品を選びやすくする。
同社の免税売上高比率は約13%で、PBは小売事業の売り上げの10%を占める。

ドラッグストアのココカラファインは「通訳」の配置を進める。
専用のタブレット端末を訪日客が多い10店舗で導入。テレビ電話で通訳につながり、訪日客の問い合わせに答える。英語、中国語、ロシア語など10カ国語に対応できる。
5店舗では自動翻訳機の試験運用も始めた。

アサヒビールは「スーパードライ」のブランドスローガンを「THE JAPAN BRAND」と定め、それに合わせてパッケージデザインを変更した。
スーパードライを高級ビールとして海外に売り込んでいる。海外販売は18年に1128万ケース(1ケースは大瓶20本換算)と17年に比べて4%増えたもよう。
訪日客にアピールし、海外での販売拡大を狙う。

鉄道各社は駅構内の多言語対応を進めている。
ダイヤ表示器や放送では英語、中国語、韓国語で案内するケースが増えてきた。
最近は電車運行で異常が起きた場合の情報提供を充実させようとする動きも出始めてきている。

京浜急行電鉄。電車の運行で異常が発生した際、ホームページ上で英語、中国語、韓国語の3言語で知らせるサービスを2月から始めた。事故や悪天候などが理由で運行に支障が出た場合、影響区間と遅れや運休について知らせる。

東京メトロ銀座線の駅構内表示器は、電車の到着時刻ではなく「あと何分」という案内を導入した。こうした表示は海外で一般的。

JR東日本は駅構内で新型表示器の導入を進める。駅名と路線名をアルファベットと各駅の番号で示す「駅ナンバリング」も表示するようにしており、京浜東北線の蒲田駅(東京・大田)では新型を導入済み。ナンバリングを採用することで訪日外国人にとって行き先が分かりやすくなる。

18年の訪日外国人は前年比8.7%増の3119万人を記録した。
20年以降は東京五輪の開催を機にさらに弾みがつく見通しだ。過去20年間の五輪開催国は開催年より外国人観光客が増えているという。小売りや鉄道で進む多言語化は、日本の国際化のスピードを速めることになりそうだ。