[社説]観光業には旅行割より経営改革の支援を
(日本経済新聞 2022年10月9日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK081KZ0Y2A001C2000000/

【ホッシーのつぶやき】
全国旅行支援が10月11日から始まったが、既に旅行したいという需要は高まっており、政府は規制改革、広域連携、経営革新の支援、文化財活用などに軸足を置くべきだという記事だ。
宿泊業での懸念は人材不足、ここに焦点を当てた支援策もあり得る。また付加価値の高い観光体験にはガイドの充実が必要だが、国が定める通訳案内士など資格と外国人が求めるガイドの資質にはずれがあり、実用的なガイド資格の創設も考えてもらいたい。

【 内 容 】

公金で補助する全国旅行支援(全国旅行割)が11日から始まる。需要喚起を目的に掲げるが、旅行需要はすでに回復しており今後は海外観光客も来る。この段階での公的支援は不要だ。政府や自治体は観光業が成長産業となるための中長期的な環境整備に専念すべきではないか。

2020年に開始、中断している「Go To トラベル」、21年の「県民割」、その拡大版である今回の割引と、旅行補助が続く。12月の終了後は「Go To トラベル」の本格再開を期待する声が観光業界から聞かれる。

コロナ禍で傷んだ経営に助けを求める事情は理解できる。しかし補助に慣れれば創意工夫による付加価値の向上や顧客獲得はどうしても後回しになる。体質改善や経営革新は遅れ、生産性は下がり結果的に国際競争に負ける。

発想を転換し、今の需要回復を追い風に成長産業へと脱皮する道を考えたい。政府の役割は目先のばらまきではなく、規制改革などにより成長の障害となっているものを除去することだ。

効果的な情報発信や業務の効率化のためIT(情報技術)の活用を促進したい。公共交通機関の乏しい地域でもマイカーのない外国人が旅しやすいよう、ライドシェア型サービスを取り入れてはどうか。不便な地域や零細な施設も、こうした経営改革や新制度を通じ世界から客を呼びやすくなる。

付加価値の高い観光体験には案内人の充実が必要だ。しかし大学入試を思わせる現在のガイド資格試験と、今の外国人が求める情報にずれがあるとの指摘が以前からある。自治体ごとに展開するPRや作成する案内書は、広く移動する外国人のニーズと食い違う。

立地や建築物に魅力があっても後継ぎの不在などで行き詰まる施設は多い。家業から脱皮し新たな担い手に運営を引き継ぐ仕組みを整えてはどうか。地域にとっても有力な観光資源になる。

人材確保もカギだ。コロナ下に人員を減らした観光業は多い。現状は需要不足ではなく人員面での供給力不足といえる。今の人手不足を賃金上昇につなげられれば、良質な人材の獲得に役立つ。

政府や自治体は、こうした企業単独では難しい規制改革、広域連携、経営革新の支援、文化財活用などに軸足を置くべきだ。経営の根幹である価格戦略は本来、企業が独自に決める問題だろう。