欧米豪市場から旅行者誘客は東アジアの延長線上ではダメなのか? -オーストラリア人の訪日旅行支出傾向から考えた【コラム】
(トラベルボイス 2019年4月17日)
https://www.travelvoice.jp/20190417-129064

オーストラリアと日本の旅行市場は、20年の間にインとアウトが逆転し、今は訪日客のほうが多い。
2018年の訪日豪州人は55万人(1.8%)だが、1人当たり旅行支出は 24万2041円 と最も高い。13.3泊という平均泊数の長さも要因の一つ。娯楽サービス費も1万6171円と最も高いが、買物代は3万円台であまり高くない。
関心のあるテーマがあれば滞在費を惜しまず、体験重視の消費スタイルを持つという。

【ポイント】
オーストラリアは1980~90年代にかけて、日本人の海外旅行先や留学先として人気を集めた。
当時の日本は海外旅行市場の拡大期。海外旅行ビギナーが多いなか、英語圏で治安もよく、親日的なオーストラリアは、安心して旅行できる魅力的な観光地だった。
訪豪日本人旅行者数は20年間に大きく減少した。日本人旅行者数の減少とともに、日本/オーストラリア間の直行便数も減少の一途をたどる一方、10年程前からニセコや白馬等にスキー目的の訪日オーストラリア人が増加し、直行便が年々増加している。
オーストラリアと日本の旅行市場は、20年の間にインとアウトが逆転した国です。

訪日オーストラリア人は、若年層やファミリー層が多い。
近年はスキーだけでなく桜や歴史的建造物等への関心も高まっています。
2018年の訪日オーストラリア人の1人当たり旅行支出は 24万2041円 と第1位です。13.3泊という平均泊数の長さも要因の一つです。
オーストラリアには広大な面積に2500万人が居住しているため、輸送コストが高く、希少な労働力ゆえ人件費も高く、給与水準の高い。物価高のオーストラリアの日常生活から訪日すると、高水準なサービスが割安に提供されていると感じることが、旅行支出の高さに影響していると思われる。

娯楽サービス費が1万6171円も最も高い。
オーストラリアの訪日旅行商品には、日本チームとの野球対戦やプロ野球観戦が組み込まれたツアーや、中高年に高まるウォーキング需要(オーストラリアではbush walkingと呼ばれ、起伏の少ない場所を歩きながらその土地ならではの景色を楽しみます)を受け、日本国内をウォーキングしながら、その土地の歴史や文化を楽しむツアー、盆栽やキルトをテーマにしたツアーなどが商品化されている。

顧客から依頼を受け旅行会社がサービスを手配する受注型企画旅行で、日数は平均2~3週間と長く、7000~1万AUD(日本円で約55~80万円)程度。関心のあるテーマがあれば滞在費を惜しまず、体験重視の消費スタイルを持つ。また、買物代は3万円台であまり高くない。お土産を買う習慣がなく、日本の食品や伝統工芸品に関心が低い傾向がある。

オーストラリア市場に適した消費促進の方法がないわけではない。江戸切子の製作体験を組み込んだところ、参加者の満足度が高かったそうです。伝統工芸品も「体験」で価値を伝えることによって、消費促進に結びつけることができるかもしれない。