訪日ゴルフ旅行の魅力と潜在マーケットについて
(『観光のひろばZOOM』 2021年7月13日)
(株)PGJ代表の西本直樹さん

【ホッシーのつぶやき】
コロナ直前の2019年12月に、西本さんとオーストラリアのJAMS,TV社とをお引き合わせいたしました。
オーストラリア人がニセコのスキー場に殺到するように、ゴルフで訪日することが増加しそうな予感を、その打ち合わせで感じました。
訪日ゴルフは韓国、台湾からのお客様が多いといい、低価格との話もお聞きしますが、富裕層の方を対象として付加価値を高めれば、価格を上げながらも、満足度の高いサービスが提供できそうです。

【 内 容 】
日本は、米国、カナダに次ぐ世界3位のゴルフ場保有国で、丘陵地を巧みに利用した多彩なコースが約2,300もあり、ゴルフ場の質の高さも 海外ゴルファーの高評価を得ているという西本さん。 今は訪日旅行もままなりませんが、これからの外国人による観光は、 自然を活かしたウォーキングなどアウトドアに変化してまいります。そのような背景のなかで、日本でのゴルフは注目されています。 2018年に(株)プレイゴルフジャパン(2021年7月(株)PGJに社名変更)を設立し、神戸・兵庫ゴルフツーリズム協議会などで活動される西本さんから、アフターコロナの取り組みについて、お話をお伺いしたいと思います。

PGJの企業理念は「『ゴルフ×観光』で日本の魅力を世界へ!」で、ゴルフ旅行専門のDMCとして、オリジナルな体験ツアーを提供する事業に取り組んでおられます。 事業の特徴は、海外のゴルフ場と日本のゴルフ場を提携させて、お互いのメンバーを交流試合などで行き来させるスタイルにあります。第1号は2019年マレーシアのゴルフ場と日本のゴルフ場を提携させた交流試合でした。
2005年に渡米し商社で働き、これまでの経験と語学力を活かした新しいマーケットで活躍したいと思い、2018年に起業されました。
ターゲットを東南アジアに絞られました。2018年におけるインバウンドの延べ宿泊総数8357万人泊の内、マレーシア100万人、インドネシア118万人、シンガポール196万人、タイ296万人と拡大しており、英語が通じること、海外のゴルフ場へ行くアクティブなゴルファーが多いこと。また、日本からのゴルフ旅行先として、近くて、気候の良い場所として選定したとのことです。
また、インバウンドは大阪、京都に宿泊される方が多く、マレーシア20%、インドネシア23%、シンガポール19%、タイ14%、オーストラリア24%と、関西はポテンシャルが高いエリアです。

ゴルフ場は、マレーシアに200コース、シンガポールに21コース、インドネシアに150コースあります。
また、18コースあるゴルフ場には1500〜2000名のメンバーさんがおられ、そのうち海外でゴルフをするアクティブなメンバーさんは400〜500名。また27コースあるゴルフ場には2500〜3000名のメンバーさんがおられ、アクティブなメンバーさんは1000名おられるので、この3ヶ国400コースには、海外でゴルフをするアクティブメンバーが500名いると推定すると、20万人の潜在顧客になります。

海外のゴルフ場など送客側は現地のパートナー企業が行い、日本側はPGJが日本のゴルフ場との折衝など受け入れ側の業務を行います。また、ゴルフツアーと言いながらも半分は観光を楽しまれます。
交流試合をする時には、日本人と相手国のメンバーが一緒にコースを回るのですが、ゴルフをプレーするという意味では、会話にもあまり困ることもなく、和気藹々と楽しまれています。

また、訪日客向け「手ぶらゴルフ」というサービスも神戸観光局の協力を得てされました。ホテルにチラシを置き、インバウンドのお客様がクラブやシューズはレンタルして、手ぶらでゴルフに行くサービスです。2019年に催行されたのですが、ゴルフ場は、これまで大勢のインバウンドを受け入れたことが無いと心配され、「ゴルフ場のマナーやエチケット」を先方に伝えるなどのサポートが重要なポイントだといいます。

次に今、検討を進めておられるオーストラリア市場のお話でした。オーストラリアのJAMS,TV社とともに、オーストラリアから訪日するお客様にゴルフをしてもらう企画です。
オーストラリアの訪日需要は伸びており、2019年に一人当たりの旅行消費額は25万円となっており、今後、ゴルフ需要の可能性も高いとみられています。
オーストラリアのゴルフ人口は、年間約100万人で人口の約5%。男性8割割、女性2割。大人の人気スポーツ4位。市場規模は8億2000万豪ドル〜10億9000万豪ドル(日本円で約700〜900億円)あります。
またオーストラリアからゴルフ目的の旅行者の一人当たり平均消費額は2017年に7380豪ドル(61万円)で、海外の市場規模は約150〜200億円あります。低価格の中国、東南アジアの人気が高いのですが、ゴルフ目的での訪日も3,2%(2017年JNTOインバウンド調査)ですが始まっているとの話です。
オーストラリアの海外旅行者数は2017年度912万人と、過去10年間で2倍に増え、訪日オーストラリア人も2019年は62万人と、過去6年間で2,5倍に伸びており、平均滞在数は約13,2泊と長期滞在の傾向があります。
アジア圏へのゴルフ旅行が増え、訪日観光客も増えているので、認知度が上がれば、スキーのように大勢のオーストラリア人が訪日する可能性は高いので、頑張りたいと講演を締めくくられました。

【質疑応答】
Q1:日本のゴルフ場は他国と比べて、どこが魅力的なのでしょうか?
A1:東南アジアのお客さんは、熱帯地方なので、コースの中に生えている草木も全く違って、紅葉などもなく、紅葉の中のゴルフ場が素晴らしいと言われています。日本のコースは丘陵地帯なのでアップダウンがあり面白いと言われます。また海外に無い電磁誘導カートも人気でした。また、ゴルフと観光を楽しみに来られますが、ゴルフが好きな方が多くて、目的はゴルフのウェートが高いようです。

Q2:海外でゴルフをされる方は富裕層だと思いますが、マレーシア、シンガポール、インドネシアの富裕層で年収はいくらくらいでしょうか?
A2:現地のゴルフ場の会員なので富裕層になります。年収で言うと800万円以上の方が多いです。経営者クラスの方には2000万、3000万もざらにおられます。

Q3:オーストラリアのサイトで日本のゴルフ場が紹介されていたのは、兵庫、三重、沖縄、高知、茨城でしたが、プレゼンで紹介された北海道が出ていないのには理由があるののでしょうか?
A3:北海道も候補であるのは間違いありませんが、自治体の協力がないと話が難しいです。ゴルフ場を取りまとめや、写真の提供が必要になります。(サイトの掲載は無料です)また、北海道でゴルフをされた方は、北海道が一番だとの声もあります。

Q4:自治体と連携してゴルフ場展開されているとお聞きしましたが、ゴルフ場マネージメント会社と連携しないのは何故ですか?
A4:大手のゴルフ場運営グループは複数のクラブを本社で一括管理されており、現場での話が進みにくい面があります。単体のゴルフ場では、支配人クラスの方が社内ですぐに情報を共有していただけます。

補足:ゴルフをするインバウンドは韓国と台湾が一番多いのですが、東南アジアに絞っておられるのが西本さんの事業の特徴です。また「手ぶらでゴルフ」も、今後、大阪関西万博などでも需要が見込めるので、応援してあげていただきたいと思います。