訪日客消費が回復軌道に、1月150万人 年2兆円上積みも
(日本経済新聞 2023年2月15日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA152DG0V10C23A2000000/

【ホッシーのつぶやき】
1月の訪日客は149.7万人で2019年1月比56%だった。中国本土からは入国制限のため3.1万人と少ないが、月150万〜200万人で推移すれば通年で2000万人前後になる。ベトナムやシンガポールの伸びも顕著だ。ホテル業界の人材不足、東京のホテルの稼働率は8割が上限だという。
やっと戻ってきた訪日客。日本経済のためにも取りこぼしのない体制づくりが求められる。

【 内 容 】

外国人観光客らでにぎわう東京・浅草の雷門前(15日)

新型コロナウイルス禍で沈んだ訪日外国人(インバウンド)消費が回復軌道に入った。1月の訪日客数は149.7万人で、コロナ前の2019年1月比で56%の水準だった。中国本土以外からの訪日客に限れば76%にまで回復した。順調にいけば年2000万人台が視野に入る。小売りや観光関連の消費復活が成長の支え役となる。受け入れ体制の再構築に向け、人手不足が最大の課題となる。

「台湾や東南アジアからの客が売り場で特に目立つ」。伊勢丹新宿本店(東京・新宿)では訪日客への高級ブランド販売が好調だ。1月の既存店売上高は三越伊勢丹の前年同月比24.5%増を筆頭に、百貨店大手5社すべてで2桁以上増えた。

日本政府観光局(JNTO)が15日発表した1月の訪日客数は22年12月から12.7万人増えた。国・地域別で最多の韓国が56.5万人で19年1月の73%、米国は8.8万人で同85%まで回復した。台湾も25.9万人で同67%だった。東南アジアはベトナムが5.1万人で19年1月比で46%増、シンガポールが2.6万人で18%増と伸びが顕著だ。

香港を除く中国からの訪日客は3.1万人で同96%減と戻りが鈍い。検査の義務付けなど厳しい水際対策が響いた。

訪日客数が月150万〜200万人ほどで推移すれば、23年通年で2000万人前後になるとの期待もある。観光庁によると、訪日客数が1973万人だった15年のインバウンド消費は3兆4771億円だった。22年は8991億円(速報値)にとどまった。23年は前年より2兆円超の上積みにつながる可能性がある。

国際通貨基金(IMF)によると、先進国・地域の成長率は22年の2.7%から23年は1.2%に鈍化する見通しだ。国内製造業の輸出が伸び悩む恐れがある。回復する訪日客需要を取りこぼさないことが重要になる。

人手不足が懸念材料だ。客室稼働率が高まるホテル業界では、清掃や配膳を担う従業員が足りず客室上限まで予約を取れない施設もある。都内大手のホテル幹部は「人手不足で稼働は依然8割が上限だ」と話す。米ヒルトンでは日本で運営するホテルのアルバイト採用条件を緩和した。

居酒屋チェーンのつぼ八では台湾や東南アジアからの訪日客が増え、「単発バイトも採っているが人手不足感がある。機会損失も少し出ている」と話す。賃金の日払いをアピールするなど、短期の人材にも求人を出す。

訪日客の動向に詳しいソニーフィナンシャルグループ金融市場調査部のシニアエコノミスト、宮嶋貴之氏は「訪日客の消費単価を高めて収益力を上げ、人材が集まる好循環を目指すことが重要だ」と指摘する。

政府は3月に新たな「観光立国推進基本計画」を閣議決定する方針だ。25年に訪日客の1人あたり消費額を20万円と、19年から4.1万円引き上げる目標を掲げる。

コロナ前より進んだ円安は消費単価向上の追い風となる。さらなる引き上げには滞在日数を伸ばし、富裕層を取り込むことが欠かせない。欧米では多様性や持続可能性に配慮した「サステナブル・ツーリズム」が注目を集める。政府は歴史的な資源の魅力を伝えるコンテンツ制作や、農山漁村での滞在型商品の開発を支援していく考えだ。