2020年訪日消費額は-84%減少の7,446億円。国別ランキングの変化に注目
(MATCHA週刊インバウンドニュースマガジ 2021年4月1週号)

【ポイント】
訪日外国人旅行消費額も2020年7,446億円、2019年4兆8,135億円、2018年4兆5,189億円でしたので、84%のマイナスと驚愕の数字です。
オーバーツーリズム問題もあり、だから「外国人旅行者」は不要だという議論は早計です。
日本の貿易収支における「輸出額(外貨獲得)」では、自動車産業に次いで2位が訪日外国人旅行消費です。
オーバーツーリズム問題は「いかにすれば解消できるか」の議論が求められると思います。

【 内 容 】
3月31日、観光庁が2020年の訪日客消費額を発表しました。

2020年の訪日外国人旅行消費額(試算値) (観光庁)
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001396380.pdf?utm_source=BenchmarkEmail&utm_campaign=2021年4月1週号&utm_medium=email

その結果は7,446億円。2019年が4兆8,135億円、2018年が4兆5,189億円でしたので、およそ84%のマイナスとなります。

2019年の訪日外国人旅行消費額(確報) (観光庁)

なお、今回の発表には注意点があります。
2020年の訪日外国人旅行消費額は以下のふたつの数値をかけ合わせて算出されています。
2020年1-3月期の1人当たり旅行支出(円) × 訪日外国人旅行者数(人)

2020年はコロナ禍で4月以降の1人当たり旅行支出が調査されていないためです。つ、あり、4月以降コロナで変容したであろう旅行者の消費動向は反映されていません。

4月以降は旅行者数自体も大きく減少したため、年間の消費額への影響は軽微だったと思います。とはいえ、コロナ禍でも日本に来た方がどのような方々だったのかを探るためのヒントとして、できれば知りたかったとやや残念に思います。

ちなみに2021年1-3月期の調査も行われていません。
さて、2020年のデータをもう少し見てみましょう。

国別の消費額は中国→台湾→香港→アメリカ→韓国の順。2018年と2019年のデータを見てみると、韓国の順位が徐々に下がっていることがわかります。なぜなのでしょう? 主要国における2020年の1人あたり旅行支出と旅行者数を比較してみます。

■1-3月期1人当たり旅行支出
中国256,566円(+20.6%)
台湾159,722円(+35.0%)
香港168,544円(+8.1%)
アメリカ208,402円(+10.0%)
韓国87,900円(+15.4% ※1)

■2020年訪日外国人旅行者数
中国976,442人(-87.8%)
台湾676,128人(-85.3%)
香港341,236人(-84.8%)
アメリカ218,764人(-87.1%)
韓国487,772(-91.2% ※2)

韓国人旅行者は元々1人あたり旅行支出が小さいことで知られていますが、上記の数値を見ると一応1人当たり旅行支出は増加傾向にあることがわかります(※1)。

ただし、中国・台湾がそれ以上の増加傾向を見せていることから、相対的にインパクトが低下しているのでしょう(とはいえ、アメリカや香港よりは増加割合は大きいです)。

また、訪日人数の減少幅も、その他の国に比べて大きいです(※2)。上記2つの理由がかけ合わさったことが、韓国の順位低下につながっているようです。

ちなみに、欧米圏を中心に2020年1-3月期は1人当たり旅行支出は低下しています(上記画像赤枠部分)。これらの数値を踏まえると、韓国人旅行者は消費額が向上している分、むしろ重要性が増しているとも考えられます。

さて続いて、ベトナムの順位がに急上昇していることにも注目したいです。これは、ベトナムからは2020年にビジネス目的の渡航者が相対的にたくさん訪れたからだと推測されます。

インバウンド回復以降はビジネス渡航のインパクトは相対的に小さくなるはずですので、「ベトナムの順位があがった!次の旅行ターゲットにしよう!」と思うのは早計でしょう。ただし、ベトナム人は1人当たりの旅行消費額も急増しています(上記画像青枠部分)。どのような行動変化が起きたのかは不明なので、今後しっかりとモニターしていきたいと思います。