QRコード決済に完敗した「Suica」 ICカードの運命、今後どうなる? そもそもなぜJR東日本の半分の駅でしか使えないのか
(Yahooニュース 2022年6月29日)
https://news.yahoo.co.jp/articles/93a0b51a30559f38f449bc8a03a7e54706b6c556

【ホッシーのつぶやき】
2021年のクレジットカードの取扱高は80兆円規模、QRコード決済は約7兆3487億円、「Suica」などの電子マネーの約6兆円という。2022年4月時点は「PayPay」が4700万人、NTTドコモの「d払い」も4300万人。日本人の4割以上はQRコード決済を日常的に利用している。
交通利用を見ると、2021年末で、JR東日本でSuicaが使えるのは全1630駅のうち840駅だけで、首都圏の大都市路線に集中している。Suica対応の改札機はコストが高く、利用者の少ない駅では導入が見送られてきたからだ。
JR東日本は2021年、QRコードリーダー改札機の実証実験を行っている。阪神電鉄でも実施されており、切符に取って代わる可能性は出てきた。南海電鉄もVisaのタッチ決済とQRコードでの実証実験が始まっている。
交通利用については実証実験段階であり、定期券や土日など券種への対応、初駅・着駅の管理など課題も多い。コストが安くて、種々サービスに対応できる時代が来るのも時間の問題だろう。

【 内 容 】
QRコード決済に押される「Suica」

キャッシュレス決済は、コロナ禍で普及が加速度的に進んだ。中でも大幅に伸びているのが、QRコード決済だ。
キャッシュレス推進協議会の利用動向調査によると、2021年のQRコード決済の取扱高は前年度比7割増の約7兆3487億円に。これまでキャッシュレス決済の主流だった「Suica」などの、ICチップを使ったプリペイド型電子マネーの約6兆円、デビットカードの約2兆8000億円を上回った。さすがに80兆円規模のクレジットカードには及ばないものの、日常の小額決済としては、完全に定着している。

『日本経済新聞』電子版2022年6月5日付の記事によれば、最大手の「PayPay」の利用者数は、2022年4月時点で4700万人に。NTTドコモの「d払い」も3月末時点で4300万人に達した。両方を使い分けているユーザーが多いとしても、日本人の4割以上はQRコード決済を日常的に利用していることがわかる。

日本政府は2016年から2025年まで、キャッシュレスの利用比率を2割から4割程度に倍増させる目標を掲げていたが、前倒しで達成されそうだ。これまでキャッシュレス決済の先頭を走ってきたSuicaは近い将来、QR決済にシェアを奪われそうだ。

2021年11月でサービス開始から20周年を迎えたSuica。買い物だけでなく、ビルの入館証や図書館の利用者証などにも利用されており、発行枚数は8000万枚を超える。

JR東日本でSuicaが使えるのは約半分だけ
首都圏で導入が始まったSuicaは、画期的なサービスだった。
改札機にタッチするだけで、精算ができるだけでなく、紛失時の再発行も可能。クレジットカードとひも付けすることでオートチャージもできる。携帯電話用の「モバイルSuica」はオートでなくとも、任意の金額のチャージが可能だ。
20年間で、使える店舗は確かに増えた。しかし、Suicaが使える場所として思いつくのは、鉄道駅のほか、駅ビルに入居しているショップかコンビニくらいだ。
また、Suicaを取り扱うJR東日本の全駅で利用できるわけでもない。2021年末時点で、JR東日本でSuicaが使えるのは全1630駅のうち「840駅」だけとなっている。しかも、首都圏の大都市の路線に集中している。
なぜ全駅で対応していないのだろうか。それは、Suica対応の改札機は設置コストが高く、利用者の少ない駅では導入が見送られてきたからだ。同様に商店でもSuica対応はコストがかかることから普及しなかった。対して、QRコード決済は商店でも導入のコストが少ないため、爆発的な普及を見せた。
現在、鉄道はQRコード決済に対応していないが、さらに普及することを見越した準備は進んでいる。

JR東日本は2021年、切符の投入口をなくしたQRコードリーダー内蔵の改札機の実証実験を行った。この改札機は、QRコードをスマートフォンに表示したり、紙に印刷したりしてかざし、改札を通過するというものだ。

一方、広島電鉄は2022年3月、現在使われている交通カードを廃止してQRコードを使った新カードに移行することを発表して話題になった。一見すると、PayPayなどのQRコード決済で路面電車などに乗れるようになったと思いきや、そうではなかった。
現在、広島周辺の交通事業者が共同利用している交通系ICカード「PASPY」に代わり、広島電鉄はQRコードを使った新乗車券システムの導入を目指していたのだ。
PASPYを利用する32社でつくる運営協議会では、機器の老朽化を理由として、2025年3月までに終了することを決めていた。それに代わる新システムとして提案されたのがQRコードを使った新システムだった。
ところが導入コストは安いものの、JR西日本の「ICOCA」との接続が不透明という問題があった。そのため、広島電鉄の提案した新システムの利用を決めた事業者は少ない。

複雑怪奇な交通系ICカード
これまで、全国では複雑怪奇な交通系ICカードの企画が乱立してきた。
政令指定都市の北九州市を走る北九州市営バスでは2021年10月、ようやく「nimoca」の利用が可能になり、Suicaなど全国相互利用サービスに対応するカードが使えるようになった。
整備は進んでいるようで、熊本市では路面電車・バスでSuicaなどのカードが利用できる。市民に最も普及している「くまモン」のICカードは、熊本以外では使えない。
岡山の路面電車・バスはもっと複雑だ。路面電車と大半のバスはSuicaなどが利用できるにもかかわらず、岡山市内でメジャーな中鉄バスの一部路線だけはSuica非対応(路面電車・バス用のハレカカードのみ対応)となっている。
QRコード決済の普及によって、 こうしたカードの乱立問題が解消されると思っていたら、そうではなかった。それぞれにQRコードを使った独自システムの開発を進めているのだ。
QRコード決済は普及したものの、バーコードをかざすだけで電車やバスに乗れるわけではないらしい。果たして、これは便利なのだろうか。