アドベンチャー旅行市場レポート2024、人気ツアーは8泊/2813ドル(約44万円)、「冷涼地域」や「未踏の地」に熱視線
(トラベルボイス 2024年6月10日)
https://www.travelvoice.jp/20240610-155774

【ホッシーのつぶやき】
アドベンチャートラベルは「身体的アクティビティ」「自然とのつながり」「異文化体験」の3要素のうち2つ以上を含むと定義されており、欧米を中心に人気が加速している。新しい傾向として「eバイクでのサイクリング」「料理/グルメ体験」が挙げられており、ツアー料金の中央値は43万6000円で8泊、料金の75%を地元サプライヤーに支払うという。
アドベンチャートラベルのほうが地元還元が多いようだ。

【 内 容 】

国際的なアドベンチャートラベル業界団体「アドベンチャー・トラベル・トレード・アソシエーション(ATTA)」では毎年、世界各地でアドベンチャートラベルを手掛ける旅行事業者からの協力を得て、顧客像、旅行参加の動機、人気の体験やデスティネーションなどに関する調査を実施している。今回で17年目を迎え、アドベンチャートラベル市場の現況や今後の展望を知るために役立つ内容を目指している。

アドベンチャートラベルとは、身体的アクティビティ、自然とのつながり、異文化体験の3つの要素のうち2つ以上を含むものと定義されている旅行形態。環境への負荷軽減や地域コミュニティの維持・発展などサステナブルツーリズムにも深く関わってくる。

2024年度調査レポート「Annual State of the Adventure Travel Industry Snapshot Report」は、同年3月末から5月初め、ツアー催行各社を対象に行った調査をもとに作成した。これまで使用言語は英語のみだったが、今回からスペイン語、ポルトガル語、フランス語、イタリア語、ドイツ語が加わった。

例年、旅行先として人気のデスティネーションは、地中海、西ヨーロッパ、北欧だが、今回の調査では、北欧など、より冷涼な地域の人気上昇が目立った。同レポートでは、背景に世界的な気温上昇があると指摘している。一方、中東、ロシアに隣接する東ヨーロッパの一部地域は、紛争の影響で旅行先としての人気は低迷した。

人気のアクティビティおよび旅行の動機については、新しい傾向がいくつか見られた。その一例が電動自転車(eバイク)でのサイクリングで、特にヨーロッパで人気が急増。そのほか料理/グルメ体験も、ここ数年、継続して人気が上昇している。また、「ラストチャンス」需要も旅行動機のランキング上位に入っており、ここでも気候変動の影響があられてる。

望ましいツアーの在り方に関する質問で、もっとも票を集めた中央値は2813ドル(約43万6000円)/8泊、料金の75%(平均2110ドル・約32万7000円)を地元サプライヤーに支払う旅程となった。マーケット規模については、今年後半に詳細を発表予定だが、アドベンチャートラベル市場は引き続き成長しており、地域コミュニティにもたらすプラス効果もさらに拡大する見込みだ。

以下に、2024年度レポートの概要を紹介する。

ビジネス概況について
・平均すると、2023年に催行されたツアーの65%は満席、参加者ゼロだったツアーは全体の1%にとどまった(いずれの数字も前年調査と同じ)。
・回答各社の取り扱い旅行者数は平均6553人。2022年(4243人)比では54%増、2019年(3974人)比では65%増だった。
・全事業部門で、スタッフ数は前年と同じか、1~25%増となった。
・回答各社の17%は、2022年比で収益が減少した。2023年の年間収益が5万ドル以下だったのは回答各社のうち12%となり、2022年(14%)、2021年(30%)、2020年(45%)のいずれも下回った。

地域別・利用者の推移(提供:ATTA)

ツアー価格、デスティネーション、体験内容の売れ筋
・最も人気が高かったツアーは、8泊の旅程で価格が2813ドル(約43万6000円)で、価格の75%に相当する2110ドル(約32万7000円)が地元サプライヤーによるものだった。
・旅行の動機で、消費者から最も多く挙がったのは、「新しい体験」「未踏の地に出かける」「ローカルのように旅する」。
・人気デスティネーションは、地中海、西ヨーロッパ、北欧、北東アジア
・注目度の高いアクティビティは、ハイキング/トレッキング/ウォーキング、料理/ガストロノミー、文化、サファリ/自然観察、電動自転車サイクリング、野生動植物や大自然の撮影

人気が高かったアドベンチャーツアー(提供:ATTA)

サステナビリティ、気候変動、リスク管理
・回答各社の48%は、すでにサステナビリティ認証を取得済み、もしくは取得に向けた取り組みを開始している。
・認証取得を目指す理由として、最も多かったのは、自然環境の保護・改善に貢献したいから。
・認証を目指す際の苦労として、最も多く挙がったのは取得にかかるコスト。
・気候変動対策として実行していることは、「よりサステナブルなサプライヤーから仕入れることで、事業に伴う排出ガスを減らす」(回答全体の53%)、「気候変動対策を意識した旅を促す教育活動の推進」(同45%)、「水資源の保全による排出ガス削減」(同41%)、「サステナブルな食材の利用による排出ガス削減」(40%)。
・72%は、安全・リスク管理プランをすでに文書化している。

マーケティングのトレンド
・世界全体では、ツアー催行事業者への直接予約が3分の2(62%)を占めている。この比率は、過去2年と同じだった。
・家族連れ、女性、50代以上の旅行者、地元および近隣地域の居住者、LGBTQIAへの訴求に力を入れることで、新規マーケット開拓につなげている。
・回答各社の68%はオンライン予約システムがあり、クレジットカード決済に応じている。この比率は前回調査からほぼ変わっていない。

未来予測
・回答各社の85%が、している。また同80%は、2019年と同等またはそれ以上になると予測している。

※ドル円換算は1ドル155円でトラベルボイス編集部が算出。