インバウンド客向けの“二重価格”はアリ? 導入の飲食店オーナー「外国人客は接客コストなどが発生」 夏野剛氏「日本の信頼感を崩していく気が」
(ABEMA Prime 2024年5月12日)
https://times.abema.tv/articles/-/10126026?page=1

【ホッシーのつぶやき】
黒門市場や道頓堀では明らかにインバウンド価格の飲食店が増えている。たこ焼き1個100円の店舗もある。インバウンド価格の根拠は「外国人へ説明する接客コスト」だというが、外国人からボッタクリと捉えられない範囲でなければならない。
今、エリア毎にインバウンド価格となっており、外国人が納得している間は問題ないかもしれないが、外国人優遇策や文化施設の入場料は見直す時期に来ているようだ。

(国内の外国人優遇策)
ジャパン・レール・パス(JRの乗り放題パス)高速道路割引。
(海外の入場料の二重価格)
ハワイ・ダイヤモンドヘッドでは、ハワイ在住者が無料、観光客が約800円。
エジプト・ピラミッドは、アラブの人たちが約200円、外国人が約1800円。
フランス・ルーブル美術館は、欧州の26歳未満などが無料、一般が約3700円。

【 内 容 】
このゴールデンウィークは、円安もあいまって全国の観光地に外国人観光客が訪れた。そんな中で深刻化しているのが「オーバーツーリズム」。鎌倉では観光客が地元住民の負担となり、連休中は長谷寺や鎌倉大仏など、観光名所への移動に徒歩を勧める実証実験が行われた。山梨・富士河口湖町のローソンでは、コンビニの上に富士山が見えるとして、観光客らの交通妨害や敷地侵入などが多発し、黒い幕を立てる対策が決まった。

【映像】インバウンド向け?築地の高額「9600円うに丼」

 また、議論になっているのが「二重価格」だ。各地の観光スポットでは、外国人用に高い値段設定をした食事などが登場。都内でも、日本人客を割安にする店も現れている。『ABEMA Prime』では、二重価格の是非とオーバーツーリズムについて考えた。

■値上げではなく日本人客の値下げ「接客や食材コストが高くなりがち」

4月に渋谷にオープンした海鮮バイキング店「玉手箱」では、二重価格を設定している。国産生本マグロや紅ズワイガニなど全60品・90分の海鮮バイキングで、アルコールを含む飲み放題を実施。ランチは平日5980円、土日祝6980円、ディナーは平日6980円、土日祝7980円としているが、日本人と国内在住者は税別1000円が値引きされる。

 オーナーの米満尚悟氏は「海鮮食べ放題に慣れてない外国人へ説明しなければならない」と、二重価格の理由を説明する。「英語のメニューを作ればいいという問題ではない。どうしてもつきっきりになり、接客コストがかかる。焦がしたり、食べられるところを残したり、ロスが出れば原価も上がる。日本人が『食べ方を知っているのに同じ値段を取られるのか』と感じないようにしている。評判は良く、客の1割強を占める外国人も『理由があれば問題ない』という」。

対象者の判断基準は「日本語ができるかどうか。ある程度理解できれば、確認しないこともある」という。「在日外国人は日本人と同じ料金だが、話せなければ在留カードを確認して、ルール通りやる」。日本人と外国人が一緒に来た場合でも「もし観光客なら、ルール通り」だ。「ネット予約では、そもそもプランを分けている。日本人向けの『割引プラン』を予約する人は基本的に確認しないが、明らかな外国人観光客は確認させてもらう」。

 観光学が専門の佐滝剛弘・城西国際大学教授は、「日本人と外国人の線引きを厳密にやろうとすると大変だ」と指摘。「個人店がやるのは自由。かつては食べ放題で男女別料金にしたケースもあった。ただ、確認方法には懸念があり、見た目や言葉だけで判断していいのか。日本に住んでいる留学生でも、日本語が不自由なケースもあり、その逆もある。グレーゾーンを設けるべきでは」との見方を示した。

■夏野剛氏「日本の信頼感を崩していく気がする」

 近畿大学情報学研究所所長の夏野剛氏は、「フェアネスが日本の美徳だ」との考えを述べる。「外国人からぼったくりと捉えられないように、『日本人だから割り引く』ではなく、時間や曜日などでの割引がいいのでは。日本の信頼感を崩していく気がする」。

海外では、文化芸術施設などで、地元住民と観光客に価格差が設けられている例がある。たとえば、ハワイ・ダイヤモンドヘッドでは、ハワイ在住者が無料、観光客が約800円。エジプト・ピラミッドは、アラブの人たちが約200円、外国人が約1800円、フランス・ルーブル美術館は、欧州の26歳未満などが無料、一般が約3700円に設定されている。夏野氏は「税金で作られているものを住民が使う場合には、ちょっと考え方が変わる」とする。

 その上で、「外国人でにぎわう飲食店が増えれば、地元住民の参入チャンスになる」とも指摘。「観光地になれば経済効果がある。住んでいる人には申し訳ないが、地元は潤う。この国は人口が減少し、経済も成り立たない。50年、100年先を見たときに『海外の人は来なくていい』と考えるのは危ない」と警鐘を鳴らした。

佐滝氏は「公の施設でないから、二重価格が認められる」側面もあると語る。「渋谷がそういう店ばかりになれば、『2030年に6000万人の外国人観光客を』という日本政府のメッセージに逆行する可能性がある。(JRの鉄道などが乗り放題になる)ジャパン・レール・パスや、高速道路割引のような外国人優遇施策もある。発信するメッセージがよくわからなくなっていて、『観光立国』を目指す立場として、整理する時期に来ている」。

■オーバーツーリズムの真の課題は“見えない部分”?

真の課題は「見えない部分」にある、というのが佐滝氏の持論だ。オーバーツーリズムの「見えない」課題として、ホテル・旅館が建ち過ぎた結果、土地や住宅が高騰し、住みたい人(特に生産人口)が住めない状況になる。また、市民相手の生活店がつぶれ、外国人向けの土産店になると、ますます市民にとって住みにくい街に変わる。長期的・トータルな目線で、国などが対策する必要性があると指摘する。

 大阪府では、オーバーツーリズムの予防・対策や、街の美化を目的に「宿泊税」の引き上げを検討している。現状の宿泊税は、7000円~1万5000円は100円、1万5000円~2万円は200円、2万円以上は300円だ。宿泊税と同程度の「徴収金」も検討されている。大阪府の吉村洋文知事は、地元住民と外国人観光客の共存共栄が重要と位置づけ、財源として一部負担してもらう方針を示している。

こうした動きについて、夏野氏は「ヨーロッパでは、以前から言われている」と語る。「ベネチアは、何十年もオーバーツーリズム。観光客に対して“入島税”を課すのは、二重価格ではなくゲートウェイを作るだけの話だ。ただ大阪の例は、自治体による徴収になるため大変。国として『入国時の航空券代に載せる』などの方法を考えた方がいいのでは」との見方を示した。(『ABEMA Prime』より)