【私の視点 観光羅針盤 430】森林環境税と観光 石森秀三
(観光経済新聞 2024年6月3日)
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【ホッシーのつぶやき】
日本は約2500万ヘクタールが森林で67%を占める。先進国ではフィンランド72%、スウェーデン68%に次ぐ森林大国だ。日本の森林の約6割が私有林、約4割が人工林で適切な間伐の必要があるが、所有者の高齢化や所在不明などで管理が不十分になっているという。森林は温室効果ガスの吸収、災害防止、水源維持、木材供給に有効だが、林業は成長産業化をひた走り、短い林齢で対象区画の樹林を全て伐採しているという。せっかく保全されてきた森林、適正に保全してほしいものだ。

【 内 容 】
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日本の森林面積は約2500万ヘクタールで、国土全体に森林が占める割合(森林率)は67.3%である。先進国の中ではフィンランド(72.9%)、スウェーデン(68.7%)に次ぐ、森林大国だ。世界の中でも森林資源に恵まれた日本で6月から新税「森林環境税」の徴収が順次始まる。1人年間千円を個人住民税に上乗せされ、税収は「森林環境譲与税」として自治体に全額配分される。

 2015年のCOP21(気候変動枠組み条約第21回締約国会議)で採択された「パリ協定」の枠組みの下で、温室効果ガス排出削減目標の達成や災害防止を図るための森林整備等に必要な地方財源を安定的に確保する観点から、19年に「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」が成立したことに基づいている。

 森林は世界的課題である地球温暖化防止に貢献する温室効果ガスの吸収源だけでなく、災害防止、水源維持、木材供給など多様な役割を果たしている。ところが、日本の森林面積の約6割が私有林、約4割が人工林で適切に間伐を行う必要があるが、所有者の高齢化や所在不明などで管理が不十分になりがちだ。

 そのために自治体に管理委託するケースが増加しているが、現実には林業従事者が減少し、森林整備人材の確保・育成が不可欠になっている。低収益や無断伐採を背景に伐採後の植林は3~4割にとどまり、放置による森林荒廃が深刻化している。さらに日本の木材自給率は現在30%程度であり、地域産木材の建築、家具、玩具への利用促進も重要課題だ。

森林環境税による収入は年に約600億円であるが、各自治体への配分基準は森林面積、林業従事者数、人口に基づくために大都市への配分が多いことも問題である。都市部は森林が少なく事業の必要性が乏しい一方で、小さな市町村は森林行政担当者が手薄で適正に執行し難い面がある。今後とも使徒や効果を十分に検証し、制度の抜本的見直しが必要になるだろう。

日本の林政はここ10数年にわたって「林業の成長産業化」路線をひた走ってきたと批判されている。具体的には強引に短伐期皆伐(短い林齢で対象区画の樹林を全て伐採)推進し、「持続可能な森林管理」に逆行してきた。本来であれば地域ごとに経済的機能を持つ生産林と環境機能を重視する環境林を明確に分け、それぞれの目標林型に応じて施業を行うべきところを、全国一律に短伐期皆伐路線を推進したために日本の林業のさらなる後輩が危惧されている。