【私の視点 観光羅針盤 426】 肩車社会の到来 石森秀三
(観光経済新聞 2024年5月7日)
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【ホッシーのつぶやき】
米国イエール大学の成田助教授が「少子高齢化の解決策は。結局、高齢者の集団自決みたいなことしかない」と21年に発言し、国際的な炎上があったという。言語道断の発言ではあるが、これから先の少子高齢化の深刻さを感じる。
1960年に現役11.2人で高齢者1人を支えていたものが、2000年に現役3.9人、20年に現役2人、40年には現役1.5人で高齢者1人を支えるに変化する。これらの状況は日本の中より海外の方がリアルに感じられるのだろう。それが「円安」の最大要因かもしれない。

【 内 容 】

総務省は4月中旬に最新の人口推計を公表した。日本人の人口は1億2119万人で過去最大の落ち込みになった。年齢別では、14歳以下の人口が過去最低を更新し、一方65歳以上の割合は29%で過去最高になった。特に働き手の中核となる生産年齢人口(15~64歳)は7395万人で最低水準にとどまる一方、75歳以上は2007万人で初めて2千万人を超えた。

 厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所も4月中旬に日本の世帯数の将来推計を公表した。2050年に全世帯の44%に当たる2330万世帯が1人暮らしになり、このうち65歳以上は1084万世帯で1人暮らし世帯全体の46%強を占めるという推計だ。男性高齢者の場合には1人暮らしの割合が50年に26%、そのうち未婚者の割合は60%へと大幅増の予想である。今後ますます1人暮らしの高齢者が急増し、見守りや介護などの支援を充実させ、地域で安心して生活できる環境の整備が必要になる。

 日本では長らく社会保障の面で、多数の現役世代(生産年齢人口)が高齢者1人を支える「胴上げ型」であった。1960年には現役11.2人で高齢者1人を胴上げ型で支えていたが、2000年に現役3.9人になって「騎馬戦型」に移行した。20年には現役2人で高齢者1人を支える形になり、「肩車型(現役1人が高齢者1人を支える)」への移行が現実化した。40年には現役1.5人で高齢者1人を支えると予測されており、いわゆる「肩車社会」の到来が確実視されている。

「肩車社会」の到来に伴って医療・介護費を中心に社会保障に関する給付の負担の間のアンバランスが一段と強まることが予想されているが、政治の無為無策のために社会保障制度の抜本的改革が適正・的確に進められていないのが現状だ。

 そういう状況の中で21年にインターネット配信番組で米国イエール大学の成田悠輔助教授が「(少子高齢化の)唯一の解決策は。結局、高齢者の集団自決、集団切腹みたいなことしかない」と発言し、それがNYタイムズ紙で取り上げられて国際的炎上が生じた。成田氏は1985年生まれ、東大卒、マサチューセッツ工科大学(MIT)大学院で博士号を取得している経済学者なので国内外で大きな話題になった。
 
 成田博士の発言は言語道断ではあるが、日本ではかつて、貧しさが故に口減しのために老人を山に捨てなければならなかったという「姥捨山説話」や「棄老説話」が各地で伝えられており、深沢七郎はそれらの説をもとに「楢山節考」を出版(56年)し、話題になった。