フードツーリズムのシンポで感銘を受けた、奥田シェフの『人と人をつなぐ料理』を読んだのでその一部を抜粋してご紹介します。

・ 江戸時代は全国に276藩あったという。そして一つの藩のなかで、政治経済社会の強い結びつきがあった。地方には、藩の性格が色濃く残っている。
庄内は庄(荘)内藩です。山形県には8藩あるが、町の個性を伸ばすことも大切だ。
・ 「冷たいトマトのパスタ」のレシピには、トマトに蜂蜜を合わせ、バルサミコビネガーとオリーブオイルとニンニクを入れて半日寝かすとある。
トマトは生産者が朝摘んだものを出荷用に取捨選択して、翌日農協に運ぶ、それから太田市場に運ばれ、並べられ、競りに掛けられ、八百屋の冷蔵庫に入り、レストランからの注文が入り、次の日ようやく届けられる。延べにして約1週間かかる。
・ 私は、生産者のところに直接行って、取れたてのトマトを手に入れ、その日の夜に出す料理に合わせて作っているが、鮮度の落ちたトマトは甘みと酸味が少なくなるので、当然レシピが違ってくる。
・ 故に、レシピ本は地方のために書かれているのではなく、東京で手に入る食材に合わせたレシピ、都会人のためのレシピということになる。
・ 「在来作物」とは、長い間その土地で作り続けられた作物で、庄内には69品目残っており、山形県全体だと157品目もある。
この在来作物こそ、地方が活性化するための大事な一つのアイテムだ。この在来作物を素材としてつながりを広げればよい。
・ 在来作物(伝統野菜)の「赤ネギ」も50年作られていなかった。種を保存している人を捜し、種をまいて、育てても、本来の「赤ネギ」が復活するまで3年かかった。
・ 都会の八百屋で売っている青首大根などは、野菜自体の味が弱く、何とでも合わせやすい。マヨネーズに合う野菜だともいえる。
一方、在来作物は個性が強すぎて扱いが難しい。在来作物にあった調理法を考えなければならない。しかし、個性も生かし方によってはプラスになる。
「料理は対比と同化」だ。クセのある味を強調させ、その他の味を同化させる。そうすると、クセのみの味が浮き立ってくる。
・ 野菜を噛んでいると、波のように重なり合って出てくる香りがあり、それが一つの味になる。その何層もの味と香りを、同じような味や香りを持つ動物性の脂肪と組み合わせる。
その両方を口に入れた時、二つの共通点が相乗効果を生んで、口のなかで香りが広がり、コクになる。
・ 私は、地元の素材を使ったメニューを作っているが、地元レストランの同業者から「地元のものが本当に美味いのか」という反発の壁がある。地元の同業者の理解も得なければ、地元に貢献したことにならない。
・ 「地元の野菜をこう使えば、こんなにおいしい料理ができる」ことを全国に伝えるたい。地元の素材を生かすこと。その素材が地元の人に愛されることを願っている。

http://www.amazon.co.jp/人と人をつなぐ料理―食で地方はよみがえる-奥田-政行/dp/4103281219