インバウンド市場の注力ターゲット調査
注力市場トップは「台湾」、今後狙いたい市場は「中東地域」 北海道は「タイ」、中国は「フランス」、東北・九州は「中国」などに注力
(じゃらんリサーチセンター 2023年7月3日)
https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/assets/20230703_travel_01.pdf

【ホッシーのつぶやき】
じゃらんリサーチセンターによると、訪日注力市場は台湾、米国、豪州がトップ3。といいながらも地域によりターゲット国は異なる。北海道が「タイ」、東北と九州が「中国」「台湾」、近畿は「米国」「豪州」、地域のリピーター特性と、観光立国推進基本計画の旅行消費額20万円を意識して、高付加価値、高単価の国をターゲットにしている。従来より分析力は高まっているが、見方によっては金太郎飴にも見える。

【 内 容 】
株式会社リクルート(本社:東京都千代田区 代表取締役社長:北村 吉弘)の観光に関する調査・研究、地 域振興機関『じゃらんリサーチセンター(以下JRC)』(センター長:沢登 次彦)は、全国のDMO・自治体 の訪日プロモーションにおけるターゲットを可視化することを目指し、インバウンドマーケットにおける市 場別の注力ターゲットに関するアンケートを実施しましたので、結果をご報告いたします。

<調査トピックス>
注力市場のトップ3は現在、今後ともに「台湾」「米国」「豪州」、 今後狙いたい市場の増加幅が最も大きいのは「中東地域」
【現在順位】
1位:「台湾」84.5% 2位:「米国」71.8% 3位:「豪州」69.0%
【今後順位】
1位:「台湾」74.6% 2位:「豪州」70.4% 3位:「米国」64.8%
【現在→今後の増加順位】
1位:「中東地域」8.5ポイント 2位:「インドネシア」7.0ポイント
3位:「フィリピン」「英国」4.2ポイント

現在、狙う市場で最も高いのはでは、北海道が「タイ」、東北と九州が「中国」「台湾」、関東が「台湾」「タイ」「米国」、北陸信越が「台湾」、中部は「台湾」「タイ」「米国」「フランス」、近畿が「米国」「豪州」、中国が「フランス」、四国が「米国」。沖縄は網羅的に狙っている。すべてのエリアの上位に「台湾」が入り、北陸信越・中部・近畿では欧米豪の複数市場が上位に入る。

【選択した理由の順位】
1位:「自地域の観光資源と相性が良いから」66.2% 2位:「自地域への来訪実績が多いから」 64.8% 3位:「訪日リピーターが多いから」47.9%
【現在→今後の増加順位】
1位:「訪日旅行の滞在期間が長い層だから」8.5ポイント 2位:「訪日旅行の消費金額が高い層だから」7.0ポイント 3位:「年収が高い層が多いから」5.6ポイント

『じゃらんリサーチセンター』研究員 松本 百加里の解説
■高所得者層の誘致ポテンシャルが高い「中東地域」
「中東地域」は、アラブ首長国連邦(UAE)など世帯年収が高い層が多く、消費額アップへの期待値の高い 市場として、注力ターゲットの増加幅が最も大きくなったと考えられます。日本政府観光局(JNTO)でも、 高所得者層誘致のポテンシャルを見越して、2021年にドバイ事務所を新規開設しています。
また、今後 狙っていきたい市場で「豪州」が2位と順位を上げていますが、2019年度実績にて消費単価が最も高いこと も後押ししているでしょう。
観光庁から発表の観光立国推進基本計画では、訪日外国人旅行消費額単価の目標が2025年までに20万円と提示されましたが、2019年実績は15.9万円と約4万円の差があり早急な対応が必要です。そのため、消費額アップにつながる施策の注目度はさらに高まると予想されます。

■東北・九州は、地方空港を活用するリピーターのアジア、
北陸信越・中部・近畿は、主要空港から東京~大阪間を横断する欧米豪を狙いやすい
エリアごとの注力市場の違いは、主に訪問経験率と空港・新幹線の交通アクセスが影響していると考えます。

訪日旅行初回は、東京や京都・大阪を中心にジャパンレールパスを活用した新幹線上の旅程を組み立てるこ とが多く、リピーターになると地方空港を活用して初回に足を延ばせなかったエリアを中心に旅程を組みま す。そのため、東北や九州はリピーターが多いアジア圏を狙いやすく、東京~大阪間に位置する北陸信越・ 中部・近畿は欧米豪が狙いやすい構図になっています。

対象市場の人気観光テーマにも大きく影響します。北海道で上位の「タイ」や「豪州」は、スノーニーズとマッチしやすく、中国の「フランス」はアー ト、東北・九州の「中国」は温泉との相性もよいです。このような特性を意識しつつ、各観光組織が狙う市 場やターゲット像を可視化していけると、同じターゲットを狙うDMO・自治体の組織は連携しやすく、広 域モデルルートの造成やプロモーションを連動することで誘客効果を高めやすくなるはずです。

■消費額アップへの鍵は、具体的なターゲット像の設定とニーズの明確化
具体的なターゲット像の回答では、欧米豪中心に世帯可処分所得上位である高所得者層がトップに入ってい ます。一方、具体的なターゲット像を明確に決めていないという回答も多数あることがわかりました。
東南アジアでは3割以上、特にベトナムは7割超え、アジアでも約3割が明確に決めていない状況です。消費額アップを実現するためには、ターゲットのニーズを見ながら地域資源の強みを生かしつつ磨き上げて高付加 価値化する必要があります。
今回アンケートの選択肢は、JNTOが21市場に対して調査を行い、市場ごとに 消費増や地方への来訪の可能性が高いセグメント等をターゲットに設定したもので、今後も定期的に調査を 行う予定だと聞いています。インバウンド旅行者の来訪実績が少なく具体的なターゲット像を設定しにくい 地域中心に、マーケティングの参考として活用することは有効な手段になるでしょう。

【調査背景・目的】
観光庁・JNTOは、 2023年6月に訪日マーケティング戦略を策定し、一人当たり消費額や地方泊数の向上につなが る市場別のターゲットなどを、属性等のデータも含めて公表しました。
本アンケート調査は、 JNTO協力のも と実施しています。

【調査概要】
◎調査期間:2022年10月3日(月)~ 2023年1月10日(火)
◎調査対象:広域連携DMO、令和3年度総合支援型DMO、都道府県庁
◎調査方法:インバウンド担当者に調査票を送付して、インターネット上でアンケートを実施
◎調査対象数:73(集計率97.3%)
◎集計対象数:71(広域連携DMO/10 令和3年度総合支援型DMO/19 都道府県庁/都道府県のプロモーション機能を担うDMO /42)