若い世代が離れて行く 〜観光都市・京都の行方〜
(NHKかんさい熱視線 2023年12月15日)
https://www.nhk.jp/p/osaka-nessisen/ts/X4X48GXNX2/episode/te/99NN3L8GQZ/

【ホッシーのつぶやき】
NHKかんさい熱視線の”京都市のオーバーツーリズム問題”は、よく分析されていました。
京都市は、宿泊施設が急増し、地価高騰や家賃高騰から、中心市街地の人口が減少し始めている。これはバルセロナで起こった現象と全く同じだ。早く手を打たないとさらに宿泊施設は増加し、オーバーツーリズムが加速する。インバウンド観光は大きな外貨収入につながるだけに、正しく議論を進めてもらいたい。

【 NHKサイト 】
いま観光都市・京都に異変が…。観光客向けの宿泊施設が増える中、地価が高騰。子育て世代が府外に出て行くケースも。観光と住民の生活の両立に必要なこととは? いま京都で異変が起きている。観光客向けの宿泊施設が増える中、地価が高騰。京都市内では1億円を超えるマンションが建てられる一方で、20、30代の子育て世代は「手が届かない」として京都をはなれるケースも。京都市は大規模なマンションや住宅を開発するなど人口流出への対策を打ち出している。訪日客がコロナ禍前を上回るなどインバウンド需要が回復する中、観光と住民の生活の両立には何が必要なのか考えていく。

【 要 約 】
中国・アジア人の実業家による京都の不動産投資が加熱している。
家賃収入もあり収益率も高いといい、特に京都市東山区は外国人にも人気のエリアになっている。しかし住居だった町家が宿泊施設(ゲストハウス)になり、街の姿が大きく変わってきた。恩恵を受ける人と、ただやかましいだけで、ゴミゴミしたところに変わってきたと住民は疲弊している。

2016年京都市は「宿泊施設拡充・誘致方針」を打ち出した。京都市長は「京都観光の最大の課題、宿泊施設の不足に真正面から向き合っていく」といい、それによって、住居専用地域でも要件を満たせば質の高いホテルが特例的に建てられる(昨年度終了)ようになり、また2017年度から2019年度、空き家改修の補助金が出され、宿泊施設改修にも適用された。2015年度に宿泊客室数3万室が2022年度6万室に増えた。
芸術文化観光専門職大学の池田千恵子准教授の簡易宿所の調査で、2011年度328棟だったものが、2016年度1493棟、2018年度2990棟に増加した。簡易宿所が急増した地域の地価の変動率を見ると中京区、東山区、南区などに前年比20%以上高騰した地域が集中しているという。それらの地域はさらに50%、100%と地価が高騰している。

住宅購入層もセカンドハウスとして購入し、資産価値上昇を見込んで購入されているなどから、京都府外の購入者が6割になっている。若い世代は京都市内に住むことをあきらめ、マンション価格が1千万円程度安い滋賀県大津市に移っている。そして、その大津市ではマンションの建設ラッシュが起きている。
京都市の人口は2023年144万人で10年前から3万人以上減少している。年代別で見ると25歳から39歳と0歳から9歳までの流出が目立つ。

観光により良い面もある。市税収入が2018年2917億円から2022年度3119億円と増加し、固定資産税も2018年度1049億円から2022年度1141億円と増加、宿泊税も2018年の15億円から2022年度30億円と増加している。

龍谷大学政策学部の阿部大輔教授は、オーバーツーリズムの議論でよく言われるのが、「観光」があることによって地域が良くなるかどうかだ。これがないと、混雑が起こるとか、地価が上がるとかマイナスの影響ばかりが出てくる。そして、観光を推進することにより町の魅力を高めるようなサイクルを作ることが必要だという。オーバーツーリズムは、観光により、市民の町から観光客のための「テーマパーク化」された町に変わっていく現象だ。税収面では、観光客は町のインフラをただで利用することになるので、観光税のように一定負担をする必要はあるという。

京都市は先月「人口戦略アクション」を発表した。若者や子育て世帯に住んでいただく取り組みとして、「建物の高さ規制の緩和」「市営住宅を子育て世代向けリノベーション」を展開しており、中でも大規模プロジェクトとして「伏見工業高校跡地を環境に配慮した大規模なマンション・住宅開発」がある。
このように京都市も危機感を持って取り組んでいるが、今の高い宿泊需要が続く限り、緩和された地域でもホテルの建設が進んでしまう恐れがある。

バルセロナでは、宿泊施設が急増し、地価高騰や家賃高騰から、中心市街地が人口減少したので、中心市街地へのホテル新設を禁止している。日本ではこのような施策は難しいかもしれないが、阿部教授は、①キャパシティ(受け入れ可能能力)の議論、②宿泊施設の戦略的な規制と誘導、③京都市独自の観光税、宿泊税で、観光で得た税を住民に還元する必要があると提言している。