カテゴリーセッション:サスティナビリティ  「誰のためにやる?訪日観光におけるサスティナビリティとは」

(インバウンドサミット2021   2021年6月19日)

https://www.youtube.com/watch?v=jXw3ry2ycrY&t=3s

高山 傑:観光庁の持続可能な観光ガイドラインアドバイザー
  https://jarta.org
森島 千佳:味の素株式会社 執行役員 サステナビリティ・コミュニケーション担当
  https://www.wwf.or.jp/activities/data/20201118resource08.pdf
多田 稔子:田辺市熊野ツーリズムビューロー 代表理事
  https://www.tb-kumano.jp
バンティング ティム:株式会社めぐるん プロジェクトサブリーダー
  https://megurun.com/トップページ/

【ホッシーのつぶやき】
「持続可能な観光」「サスティナビリティ」の本質に触れるセッションだった。
ニュージーランドから山形県に移住し、山伏をされているティムは、「持続可能でなければ“まちづくり”と言えない」と喝破します。
熊野古道もカナダ出身のブラッドに教えられたと言います。熊野の何が魅力か? 「田舎の生活と文化」「精神的な文化」「伝統的ないます。
森島さんは、企業も社会課題を解決する使命を持ちますが、その社会課題がより大きく「地球規模」になってきただけ。観光も、地域の歴史や文化、生活など“ストーリー”をつけて伝える必要があると言います。
登壇者は、それぞれ個性の違う中で難しい「サスティナビリティ」をあぶり出してくれたと思います。

高山:このセッションは「誰のためにやる?訪日観光におけるサスティナビリティとは」となっていますが、なるべく「サスティナビリティ」という言葉を使わずに、「地域のための観光なのか」「観光のための地域なのか」という、そもそもの話を視点に置きながら話を進めたいと思います。まず皆さんに自己紹介をお願いします。最初は私から自己紹介させていただきます。

私は、アメリカの幼稚園、高校、大学にいて、英語が喋れたので企業通訳として世界を回りました。最終的にはホテルチェーンに雇われ世界中を渡り歩きました。コスタリカで面白いエコツーリズムに出会い、観光で学校や病院を建て、生活水準の高まりを目の当たりにして、日本でもできたらなぁと思い、世界中で活動しております。

今は、アドベンチャーやエコツーリズムの旅行業を生業としています。京都を拠点としていましたが、昨年、淡路島に移転しました。また、持続可能な観光の審査員やアワードの審査員、認証制度の審査もしています。また、世界エコツーリズムネットワークのアジア(21ケ国)の会長もさせていただいており、去年から、観光庁の「持続可能な観光ガイドライン」の策定に携わっております。

森島:味の素(株)の森島と申します。企業も20年、30年と生き残るためには、経営にサスティナビリティの概念を入れなければならない状況となり、「サスティナビリティ」と「コミュニケーションを中心としたコーポレートブランディング」を担当しております。

私の旅の原点は学生時代、当時、“バックパッカー”や“地球の歩き方”が流行っており、大学の時にヨーロッパと中国を回りました。旅の面白さは、自分で組み立てていくことだと思います。旅の途中にはアクシデントがつきものですが、アクシデントにあった時、地域の人と触れて楽しさが倍増しました。海外の人は、自分が住んでいる所を誇らしげに話す姿も、印象深い思い出になっています。

35歳を過ぎてトレッキングにはまり、それからは日本の素晴らしさに目覚めています。自然も素晴らしいのですが、下山した後の、温泉、お酒、そして美味しい食べ物が、やはり旅の醍醐味と感じています。

サステナビリティを担当して思うのは、生活者の価値観が変わってきていることです。例えば、食品や調味料を選ぶ時、「料理が簡単に出来る」というような直接的なベネフィットが求められています。また生活者からは、味の素が世の中に対して何をしようとしているのか、どのような貢献をしようとしているのか、ということを感じ取っていますし、商品選びもこの傾向がますます強くなると感じています。この感覚は、旅の仕方や旅の価値観も変えるのかなぁとも思います。

多田:田辺市熊野ツーリズムビューロー会長の多田と申します。私は和歌山県で生まれ、和歌山県で育ち、ずっと地元にて、観光に関わり20数年になりました。本業は田舎の会社の経営です。

ビューローの“企業理念”には、『世界遺産熊野古道を核とした観光振興を通じて、地域の人々が地域に誇りと愛着を持つことができ、この地を訪れる旅行者にも満足していただけるような「住んで良し、訪れて良し」の地域づくりに取り組みます。そして先人たちが1000年以上前から培い、守り、繋いできた地域の自然、歴史、文化資源の価値を次の1000年につないでいきます』 また“目指す未来”には、『私たちは、地域をマネジメントするDMOとして、地域と旅行者をつなぐサポート役を担います。私たちは、地域の人々と旅行者が互いに尊敬、尊重し合える環境づくりに努めます。私たちは、地域に寄り添い、地域から信頼される組織として地域とともに歩んでいきます』ということを目指して活動してまいりました。

もう少し具体的な“観光戦略の基本スタンス”を申し上げますと、「ブーム」や「ルーツ」大切に、「乱開発」より「保全・保存」、そして「マス」より「個人」、「インパクト」を求めず「ローインパクト」で、世界に開かれた「上質な観光地」を目指すということで、設立からずっとインバウンドを推進し、持続可能で質の高い観光地「田辺市」を目指してまいりました。

この考え方を導入するにあたり外国人の目線を入れました。カナダ人のブラッドが言ったのは、「熊野は東京と真逆」そして「京都でもない」。何が魅力かというと「田舎の生活と文化」「精神的な文化」「伝統的な宿」「熊野古道を歩くという体験」が出来て、「美味しい和食」と「温泉」。何よりも良いのは「優しい人」。みんなが「地域の人たちを優しいと言う」と言うのです。私は、これはすべて「普通の日常にあり、この地域で百年千年と続いてきたことばかりじゃないか」と直ぐには理解することができませんでした。

でもブラッドを信じるしかないと思い、この魅力を伝え、経済活動に結びつけていくため、私たちは、地域と旅行者を結びつける「着地型旅行会社DMC」を作りました。そして売り上げはウナギ登りに上がったのですが、昨年、コロナでどん底に落ちたという状況です。

高山:今日のためにティムが動画を作って来られましたので拝見いたします。

ティム:ニュージーランドで生まれ、2010年に山形県庄内に移住しました。移住してすぐ庄内に恋をし、この地に貢献したくて2016年に「株式会社めぐるん」の「山伏道プロジェクト」のコアメンバーになり、17年に出羽三山神社の修行に入って、正式に山伏になりました。山伏名は「諒宣」です。

出羽三山は1400年前からは山伏や巡礼者、最近は一般観光客から愛される霊山です。今は「山伏道プロジェクト」と出羽三山神社発祥の「出羽三山門前町プロジェク」に関わっています。地域には大都会にない文化、歴史、体験を体感することができるので、持続可能な地域を作ることができると思います。

「山伏道プロジェクト」では、「大聖坊」という宿坊13代目の星野尚文先達の山伏修行や、宿坊の巡礼体験を英語でお伝えしています。山伏修行は「自然に身を置いて、感じたことを考える」という昔からあった感じる学問であり、「受けたもう」という精神性を身に付けるものです。誇りに思うのは、山伏修行をするために訪日する方が少なくないことです。初めて訪日する方もいますし、リピーターになる方、なかには正式な山伏になる方もいます。

こうして地域の文化や経済を保ち、世界の人々の人生に深く響く体験を提供することができることが、とても誇らしいです。「株式会社めぐるん」では、今、サステイナブルツーリズム国際認証取得を目指しています。認証で一番重要なのは“持続可能な仕組み”です。例えば、環境問題に関して“地球にやさしいものを使っているか”“フェアトレードコーヒーを飲んでいるか”“地域の人々のニーズに合った給料を支払っているか”があります。これまで“おにぎり”をプラスチックで包んでいましたが、笹の葉に変えました。参加者にマイボトル持参をお願いしました。また、飛行機じゃなく電車で来てもらったり、JALとパートなぁシップでカーボンオフセットを進めたりしています。

また売上の1%か、収益の10%を地域のサステイナビリティに寄付しています。2017年からは「門前町プロジェクト」にも参加しています。持続可能でなければ“まちづくり”と言えません。昔は宿坊も大勢の国内巡礼者で潤っていましたが、今はそれも無くなり、宿泊費を同じ値段で続けるのは厳しくなりました。それを、宿坊の宿泊、精進料理、巡礼体験に、英語の説明や解説文を付ける仕組みで差別化しました。羽黒山は特別天然記念物の杉並木が有名ですが、腐った木もあり危険です。風で倒木してお社を壊したケースもあります。「門前町プロジェクト」で調査し、ファンドで危険な木を切ったりします。保全活動で守るしかないので、インバウンドなどで資金を集めたりしています。

究極の目標は、ニュージーランド並みの所得を実現することです。さもなければ地域は持続できませんし、次世代に残すことができません。ご静聴ありがとうございました。

高山:「山伏になれるのですね…」、日本人でありながら考えさせられました。

多田さんの所も、ティムの所もそうですが、いわゆる観光地ではなくて、日本の心の拠り所だと思いました。
ここからは「サステナビリティ」という言葉はさておき、いわゆる「訪日観光のためにやらなきゃいけないこと」、そもそも「観光としてやっていく中で我々がどう考えるか」について、お話したいと思います。ティムさんにお伺いしますが、「観光って誰にとって必要です」か?ティムさんにお伺いしますが、「観光って誰にとって必要です」か?

ティム:何だろうね… 無くても生きていけるから必要ないとは思うけど、より人生を深く経験したければあった方が良いだろうと思います。観光は、地域のためになるし、次世代のためにもなるので、そういう意味で必要だと思います。

高山:極論をいえば、「地域のためにならない観光は必要ない」と言う意見がありますが、多田さんはどうお考えですか?

多田:熊野には、そもそも「熊野詣」が昔からありましたから、そういう意味では、昔から観光地だった部分も多いと思います。ただ地域に住んでいるだけの普通の人たちにとって、観光が必要かと言うと微妙です。普通に暮らすには、観光に来られる方がいない方が静かです。しかし、産業も少ない、人口もどんどん減っていくという中で、「観光」というツールは、地域を持続的に支えるため有効なツールだと思うのです。ですから、我々の地域においては、観光を最大限に活用させて頂きながら地域を守れたらと思います。

高山:我々、「持続可能な観光」をやっている人間は、「観光はあくまでも手段だ」「観光がゴールではない」という共通認識があるのですが、森島さん、旅人としてこれは良かったみたいなエッセンスはありますか?

森島:旅の良い所は、日常生活では得られない体験ができることかなぁと思っています。そういう意味では、癒しの側面もありますし、心の栄養をもらえる側面もあると思います。やっぱり食べることが好きですから、地域の食は深く知りたいですし、自然、体験で出会う人々、先ほども「人が優しい」という話も多田さんからありましたけど、エリアの人との接点が旅をより豊かにしてくれと思います。先ほどトレッキングの話をしましたが、エコガイドさんや地域の自然に詳しい人にガイドをお願いすると、自分たちでは発見できないことが分かり、旅を豊かなものにすると感じます。

高山:そういった旅の醍醐味が、みんなのためでないような気もします。本当にユニークな所を目指して来られる人たちを、大切に地域で受け止める観光であってほしいと思うのですが、コロナ前の大量輸送やオーバーツーリズムで歪みも見られました。当然、観光でもSDGsに取り組まなければならない、特に12番の旅行会社の「作る責任、使う責任」があります。食品会社でいいますと、食品ロスや海洋プラスチック問題などがありますが、SDGsについて考えたいと思います。

森島:SDGsに配慮したモノ作りは会社としても取り組んでおり、実際に生まれた商品も大事ですが、それだけでなくて、生活者に分かるようにお知らせしないといけないと思っています。私もサステナビリティを担当していますが、取り組むことも大事ですが、ステークホルダーの皆さまや生活者の皆さま、投資家の皆さまにも分かるように、共感してもらえるように、コミュニケーションすることが同じくらい大事だと思っています。先ほど、商品を選択する時の価値観が変わっているという話をしましたが、やはりモノだけではなくて、どのような思いの背景で作られたかという情報とセットで届けて行くということが大事ではないかと思っており、それは旅でも同じなのかなと思います。

高山:アトキンソンさんの話もありましたけれども“エビデンス”ですね。観光地であればあるほどマネジメントをしていく必要があり、地域でやっている意義とか、どのような人に来てもらいたいとかを文書化して、一般に公開していくことが大切だとされています。多田さん、「ブームでない、ルーツ」という話をされましたが、どういうことでしょうか?

多田:「ブームよりルーツ」という言葉が出来たのは世界遺産登録が背景です。世界遺産登録直後はバブルが起こり、狭い谷間の村に1日100台くらいの観光バスが押し寄せ、オーバーツーリズムが起こりました。地域に住む者とすれば、たくさん来てくれて嬉しい気持ちもあったのですが、切なかったのです。このような観光の仕方で本当の良さが分かってもらえるのだろうか、きちんと伝わるのだろうか。「ブームはいつか去る」ということで、「ブームよりルーツ」を大切にして、本当の良さを伝えたい、良さが分かる人に来てもらいたいという背景が生まれました。

そういうことを中心にやってきましたが、私たちの弱さはエビデンスです。先ほどティムさんが、いろいろな認証制度にチャレンジして国際基準に基づいたものを目指しているとお話をお聞きしましたが、私たちも、何となくイメージでは捉えているし、長い歴史の中でそういう暮らしをしているのですが、そこにコミットするにはまだ足りないと思いました。やはり数値化し、指し示すものを作ることが、これからのサスティナブルツーリズムに必要なのだろう。それが単価にも影響するのだろうと思いました。

高山:観光庁も「持続可能な観光のガイドライン」を作り、私も普及活動をさせていただいていますが、この重要性が日本全体に伝わるのに、どれだけの時間がかかるのかという思いもあります。できている所を取り上げる仕組みも必要ですが、地域にとって観光はどうあるべきかを、もう1度考え直すタイミングかなぁと思います。

多田: “伝える”についてですが、何となくイメージや写真や言葉で伝えるのは出来ていると思うのですが、世界のマーケットにきちんと伝えるノウハウを構築しないと、負けてしまうと思いました。

高山:ティムさんから国際基準の話もありましたが、山伏という信仰を観光商品として売ると、信仰を軽んじられているような気もしますが、持続可能な観光に取り組みについて、難しさ、もどかしさ、チャレンジしているような話があれば教えてください。

ティム:熊野古道も同じだと思いますが、観光を商品として売って今があると思うのです。外から人が来るという意味では観光ですが、私たちは、観光というよりは自己啓発のためのツールを提供していると考えています。

高山:地域のためになっていない観光があまりにも多くて、それらと一緒にされては困るという面もあると思います。そのために認証制度や格付けは国際的に認められやすいツールになるのだと思います。森島さん、日本の企業がSDGsや社会貢献をする目的、真意を教えていただけますか。

森島:「味の素」は、100年以上前に生まれた会社ですが、創業の志というのは、今の社員にも受け継がれていまして、1800年後半の事ですが、池田博士がドイツに留学をした時、日本人と比べて圧倒的に体格が良いドイツ人を見て、屈辱を感じられたと言います。

帰国されて湯豆腐を食べている時、豆腐はタンパク質も豊富で栄養価も高いけど、昆布で出汁を取って食べている。この原理を突き詰めたら、昆布のうまみ成分であるグルタミンサンにたどり着き、商品化したのが「味の素」という事です。

創業の志としては、美味しく食べて「健康づくり」という、「世の中の役に立つこと」から生まれています。

日本には「三方良し」とかの言葉もありますが、元々の根っ子は同じような企業がたくさんあると思います。CSV(社会と共有の価値を創造すること)も一時言われましたが、我々も「味の素版CSV」を作り、“世の中の課題を解決する”ことと“企業で利益を得る”ことを重ねる考え方の基本は変わっておらず、「社会課題」がより大きな「地球の持続性」という規模の課題に変わってきただけだと思います。

高山:ブレない姿勢を貫くことは難しいことですね。インバウンドで10年20年と事業している人もいますが、新しい会社も増えました。日本は、変わらないことを良しとする考え方がありますが、インバウンドでは変わりに変わって、合わせに合わせてということをすごく感じます。地域が変わらないことで日本の良さが伝えられたらと思うのですが、パイをたくさん取って、薄利多売になることを懸念しています。

SDGsの8番にある「働きがい」で、観光をやっていて「本当に良かった」と思うためには「サステイナビリティ」が必要だと思います。そこで皆さんにお伺いしますが、「サステイナビリティ」について、言葉で言うのでは無くて、アクションを起こすにはどうすれば良いでしょうか?

ティム:答えはいろいろあると思うのですが、ニュージーランド人の私から見ると「最低賃金が安すぎる」と思います。ニュージーランドの最低賃金は1500円以上なので、山形県の倍ぐらいです。賃金を増やすだけでは問題が解決するわけではないのですが、苦労している人もいるので、もっと生きやすいようにできたらと思います。

多田:私が、観光の現場に行って感じるのは稼働変動です。

これはティムさんの賃金の話にもつながるのですが、日本の観光は稼働変動が激しすぎる。そうすると安定して働けないし、良い人材も集まらない。それが一番の原因じゃないかと思うのです。

そのためにはインバウンドは凄く良かったのです。観光業界全体で稼働変動を改善できないかといつも思っています。

高山:コロナ禍において、週末中心の観光に戻り、長期滞在できない方が増えてしまって、観光地としては難しい時代に入ったと思います。

持続可能な観光と言っていますが、「地域のことを考えてやっているのか」が大きな課題です。これまでレポートを書くためとか、SDGsでアクションの話はするのですが、実際にエコな生活をやっていれば無理なくできるので、手本となる日本の地方と言うのが、インバウンドをやる上で大切だと思います。

このような点について、どのような形で地域が観光に取り組むと、より良い観光地になるかについて、ヒントを頂きたいと思います。

ティム:森島さんも話されましたが、「ストーリー性をうまく伝えること」だと思います。

地域の人も一緒に歩いていける観光のビジョンを考えていけたらと思います。

森島:先ほども“ストーリー性”や“伝える”という話をさせていただきましたが、エリアで取り組んでいる人たちが、本気でやっているのか、心から思ってやっているのかということが、訪れた人に届くのだと思います。

私もコミュニケーションの立場で、ビジョンや戦略を格好良く伝えても、普通の人には、心から“いいね”と言ってもらうことはありません。本気で取り組んでいる1人の従業員の話だったり、チームで汗を流して苦労したエピソードを、ストーリーをつけて伝えると臨場感もでます。生活者の人たちには「共感」してもらえないと意味がありません。

そういう意味では、熊野の人たちが日々、当たり前に行なっていることもあり、こんなに長く続いてきたとか、生活の中に溶け込んでいるとか、あるいはこんな苦労があったとか、具体的なエピソードを盛り込んだストーリーにできれば、人の心に届くんだろうと思います。

高山:ありがとうございます。森島さんがうまくまとめてくれました。

最後に、地域にこういう観光があれば、こういうメリットがあるとか、こうすればサステナビリティにつながるとかの話があれば、お話しいただきたいと思います。

ティム:私が思うサスティナビリティは、本当に将来のことを考えているかということです。

多田:ぜひ見ていただきたいのが、三本足の“八咫烏”です。「3つのR」、「Responsible」「Respect」「Reality」この3つを大事にしながらやることが大切だと思っています。

高山:最後に私が感じたことをお話しさせていただきます。地域で観光するということは「地域で稼がないといけない」。それは他所の旅行会社に依存するのではなく、「自分たちで何とかする」ことでないといけない。その意味ではティムさんも多田さんも、自分で稼ぐという所が一番大きいと思います。

マネージメントできていないと持続可能になりません。ターゲット、環境、社会、経済など色々ありますが、ライフスタイルそのものが持続可能であるということが本質的なところだと思います。

地域のための観光として責任もってやる。そういう活動もいろいろな所で始まっています。観光庁でも、昨年度5地区、今年度15地区をモデル地区として選びました。助成金に依存する形ではなくて、地域力で解決していくような形で進めていただければと思います。

「サスティナビリティは誰のためにやるのか」については、お分かりいただけたと思いますので、よろしくお願いいたします。