「インバウンド100」Facebookから選ばれた女 ビヨンド社の道越万由子
(木立 徹 |インバウンドプロデューサーNOTE 2022年8月20日)
https://note.com/torukidachi/n/n3811898cd7ca

【ホッシーのつぶやき】
SNSマーケティングが重要だという良い記事。
Facebookターゲティング広告で実績を作り、Facebookアジア本社から「訪日インバウンドの海外向けSNSターゲティング広告でビヨンド社が一番」とFacebook社との連携が始まったという。
地域は活性化に一所懸命取り組んでいるが発信力が弱い。今、マーケティングも転換点、「内の地域に来て!」だけでは無視される。地域での取り組みも「人間らしさ」がトレンドになるは、重要な視点。

【 内 容 】
DeepJapanでは日本を元気にするために、インバウンドの支援をしています。観光業界に足を踏み入れて8年、お陰様でインバウンドの各分野のエキスパートや観光庁の専門家や地域で観光事業を営む方とのネットワークもできてきました。そんな素敵な観光仲間たちの取り組みを紹介することを通じて観光業界に貢献できるのではと、ふと思い立ち100人インタビューを始めることにしました。

第一弾は「Facebookから選ばれた女」と題してインバウンドSNS運用が得意なビヨンド社の道越代表にお時間をもらいました。

それにしても「Facebookから選ばれるってすごくないですか?」

選ばれるって言うのはなんかおこがましいですが、起業してから2年目Facebookターゲティング広告の運用でひたすら実績をつくっていたら、ある日突然シンガポールにあるFacebookのアジア本社から連絡が来たんです。日本支社を飛ばしてアジア本社からアプローチが来てビックリしました。

そりゃビックリしますよね。何でまたアジア本社から連絡が来たんですか?

「日本のインバウンドの海外向けSNSターゲティング広告は、ビヨンド社が恐らく一番やっているよ」ってことで、担当がついてくださり、共同で日本の地方創生やインバウンドを伸ばしていくための連携がスタートしました。当時は海外向けの実績をたくさん作りまくっていた時期ですし、長期で運用していたアカウントも相当数ありましたからね。Facebook社も広告アカウントの運用実績を見て、その中から声をかけてくださったんだと思います。
地方創生やインバウンドっていう軸でアカウントを動かしている事例が当時なかったから、Facebookアジア本社も興味を持ってくださいました。

どういう情報交換をしてたんですか?メッチャ興味があります。

「効果を追う・効果に繋げる施策をやってほしい」というのが、Facebookアジア本社の要望でしたね。他にもInstagramがこれから伸びてくるから、それを広めて欲しいとか、まるで私たちの営業部長のように、運営しているアカウントを見て改善提案してくれたり、他の事業や媒体、他国の自治体や企業のグローバルでの最新事例や運用のポイントを教えてくれました。

そんな大事なことを教えてくれるんですか?完全に役得じゃないですか

Facebook社は自分たちのみではなくて、私たちのような運営会社や代理店と連携して、広告の販売をしているんです。彼らとしては、予約とか購入とか消費者のアクションに近い広告をやって、SNS広告の実績を作っていきたい。効果がでるなら、Facebookの広告予算が増える。

なるほどFacebook社も打算というか、商売で自分たちの効果を出して売上を増やすために合理的なことをしているんですね。

どうやったらFacebook広告で効果がでるのか、を真剣に考えている会社です。パートナーとしてはとてもありがたかったですね。facebookアジア本社と共同で、東京でインバウンド×S N Sをテーマとしたセミナーも実施し100人ほどの方にお越しいただきました。

Facebookを観光に活かす魅力とはなんですか?

誰でも取り扱えて、世界中の狙った国の狙った属性の人にピンポイントで発信できるところが魅力です。Facebook社のターゲティング広告は個人の行動や思考の巨大なデータを保有しているので、ターゲティング精度が非常に高い。これはコロナ前まで300社以上のアカウントの運用をやってきて、インバウンド集客や海外に発信するには最も効果があると、実感しています。最近では海外でもInstagramの利用率が伸びてきているので、Instagramにも力を入れています。

Facebookのアクティブユーザーが減っているとか言われていることについては?

日本国内の若年層はあまり使わなくなってきていますが、世界の月間のアクティブユーザー数は依然として1番多いですね。

引用元:https://www.statista.com/

しかもInstagramと同じ会社なので連動して広告配信できることもポイントです。ターゲットや国に合わせて使うSNSを検討して活用していくことが必要です。

SNS広告はこれからも有効であり続けるということですか?

今は分岐点に立たされていると感じています。「SNSは効果的だった」それは間違いない事実なのですが、これから「広告」の力が弱くなっていくと思っています。
「広告」というのは一方的に「これ良いよ!」って根拠なく押し売るイメージってないですか?ともすると「良い面だけ拡大」したり、自社のサービスの特徴を発信する。そのやり方だと消費者が賢くなってきているので、通じなくなってくる未来が来ているんだと思います。Z世代と呼ばれる方達(25歳以下の世代)は、小さい時から当たり前にスマホがあったデジタルネイティブ世代。彼らの中ではすでにそれが起こってきていて、広告的なメッセージの発信ではなく、企業や地域の取り組みやストーリーなど、PRよりな情報発信の重要性が相対的に高まってきています。

「どう良く見せるか?」から「自分達は何者なのか?」に変わってきているということですか

もちろん、最初に広告を出してアプローチを得るのは大事です。でもそれ以上に、自分たちの理念、どんなストーリーがあるのか、社会に対してどういう立ち位置で、何に取り組んでいるのか?と言うメッセージに共感する人達が増えてきています。長期的に本物のファンをつくれるか?が大事です。
プロダクト自身を良くする手段は一杯あるのに、見せ方だけ変えても上手くいかない。女子大生やZ世代の人を集めて彼女達のS N Sの使い方を教えてもらう勉強会を定期的にやっているのですが、「共感が持てるメッセージにしか反応しない、興味のある情報しか見ない、商品よりもストーリーや理念に共感する」等、新しい発見ばかりです。若い人達から学ぶことは多いですよ。ダイバーシティやSDGsの教育なんかよっぽど先に進んでいるし、世界のトレンドに近い思考を持っている。

コンテンツから創っていこう。というのが最近の私たちチームの合言葉です。

広告だけの時代は終わる。伸び続けていたGoogleの検索広告の売上も減ってきている。

広告だけの時代は終わるって、パワーワードですね。

そうなんです。私たちの商品に来て、うちの地域に来て!という広告を配信するだけでは無視されます。地方プロモーションも、その観光地での、その人の生き方、立ち位置、取り組みや思い、そんな人間らしさがコンテンツのメインのトレンドになっていくのではないでしょうか。

話は変わりますがITやPRのキャリアを歩んできたと思いますが、どうして観光分野をやり出しのですか?

起業した時は、インバウンド向けのSNSプロモーションが面白いと思ってはじめました。自治体からインバウンド観光向けのSNS運用の問い合わせが来て、やり出したら海外からの反応がすごく大きくて本当に面白かったんです。ホントにキッカケはそんなもんですよ。
ただちょうどその時に、長崎県五島列島の両親の母校である中学校が廃校になったって道越家で大きな話題になったんです。両親がすごく悲しんでいた。「これはヤバいな、こういう地域は全国にたくさんあるんだろうな。」と思って地方創生を私たちの世代が取り組まなければいけないと実感し興味を持ち、真剣にやりたいなと思った。

それがインバウンド×地方創生×デジタルマーケティングを会社と自分の人生の軸にした瞬間です。とにかく地方は発信力が弱いので、そこをなんとかしていきたい。日本の発信力を上げていきたい。

地方は発信力が弱い、ってよく言われるますが、いったい何が弱いんですか?

例えば私の両親の出身地の五島ですが、漁場として本当に釣りをするには良い場所なんです。雄大な自然もあり、観光地としてのポテンシャルもとても高い。このことは釣りをする人は皆知っています。もちろん五島の人もそのことを知ってはいる。でも五島の人はフィッシングの聖地であることを大々的には発信していない。観光資源のすごさに気が付いていない。

五島の海が綺麗。いつか行ってみたい。

なので、五島市さんに数年前から五島の可能性とフィッシングの聖地を目指そう!とご提案して、今年度から正式に事業として取り組んでいます。まず初心者でも気軽に手ぶらで釣りに行けて、ガイドが釣り方も教えてくれて、釣った魚を捌いて美味しく食べられたり、お土産で送れたり、ホテルや飲食店、渡船業社とも連携して、初心者も楽しめるフィッシングオールインワンパッケージの仕組みを構築し、国内だけでなく、海外にも発信していこう。ということで地元の皆さんと連携して五島をフィッシングの聖地へするべく、取り組んでいます。そしてコンテンツができたら一気に国内・海外にS N Sやあらゆるツールを活用して発信していこうと思います。

やはり、情報発信をする術やマーケティングのノウハウが、どうしても東京に一極集中しがちなので、東京で働く私たちが上手く地方に情報やノウハウを還流したいですね。

発信力が弱いのは結果で、特に現状を変えたいという意思が弱いとかはないのですか?

そんなことはないんです。よくよく話して見ると地域の方は、若い人が都市部に行ってしまうことを寂しく感じているし、何とかしたいという気持ちでは皆さんいらっしゃいます。観光資源をしっかり磨き、発信し続けることがとにかく大事です。効果が出るまで地道に検証を繰り返しながらPDCAを回していく。それの積み重ねが大事です。ゴールはないのです。永遠に発信し続ける。

情報発信って成功例だけ見るとキラキラしてるから、地道にやり続けるって辛くないですか?

辛いし、大変ですよね。でも役割分担して、継続的に続く仕組みを作って、地道に続けて欲しいです。真剣に持続的にやれるところが勝つんじゃないでしょうか?地域の各自がバラバラ個人でやると大変だと思うので、地域にやろうっていうキーマンがいたり、役割分担をしたり、みんなで団結すればやれます。それがDMOの役割だと思うんですよ。
ずっと運用を外部に丸投げではなく、自分たちでちゃんとノウハウを蓄積して、長期的にやっていく。それしかないんです。

長期的というと具体的には、5年~10年とかのスパンですか?

いやいや何年とかじゃなくて、永久にやり続けるしかない。そこにかかるコストや時間は最初ほど掛けないといけないですが、費用対効果はどんどん良くなっていきます。特にマーケティングは、時代に合わせてトレンドも変わっていくので、やり続けるしかないんです。その中で検証を繰り返し自社の勝ちパターンを見つけていくことの繰り返しです。
ただ長期戦になると一人でやるのは大変なのでやっていく持続可能な仕組みづくりが必要です。写真や文字が得意な人をアサインするとか、大学生とか移住者にやってもらうのもいいですね。この体制作りも、時間がかかる。

SNSの運営ってデジタルにゴリゴリやっているのかと思ったら、案外ビジョンや人間関係も大事なんですね。

そう、地道な作業なんです。魔法みたいなことはありません。そして地域の皆さんが、自分たちでできることは自分たちでやろうという意識を持つことも大事です。私達みたいに東京の会社は、お膳立てや東京に集約されたノウハウの提供、他の地域の事例を共有していくことはできる。でも主体は地元の方でないと続かないのです。

好きな観光地
観光先を選ぶ基準は「食」。食べ物がおいしいところで言うと、鹿児島が好きです。
豚も牛も鶏も美味しい。魚も野菜も美味しくて全部美味しいです。もちろんお酒も。ちょっと語彙力が弱いですね笑。鹿児島の食文化が好きなんです。鹿児島の方のイタリア人みたいに陽気な人柄も好きですよ。

道越万由子 株式会社ビヨンド代表取締役
1983年山口県生まれ千葉県育ち
両親は長崎県 五島列島の出身。

一般社団法人日本インバウンド連合会(JIF) 副幹事長
いばらき広報戦略アドバイザー
観光庁 広域観光周遊促進 登録専門家
デジタルハリウッド大学 非常勤講師
唎酒師

現在は、両親の地元、五島列島を「世界一のフィッシングの聖地」にするための取り組みもしています。