【アトキンソンのインバウンド経済論】
デービッドアトキンソン 小西美術工藝社社長
山崎大祐 マザーハウス副社長
(PIVOT TOLKのYouTube 2023年2月22日)
https://www.youtube.com/watch?v=DT7chOwYmA4

【ホッシーのつぶやき】
雇用助成金があったのに雇用を切ったので人材が戻らない。日本のホテルの客室はすべて同じ仕様、海外は同じ仕様にせずリピーター確保の戦略という。日本はモノは良くてもダサい、個性がないことに繋がる。高付加価値の開発は多様性に繋がる。そして高単価に繋がるという。
高単価のインバウンドと従来単価の日本人が共存する道を歩むしかないようだ。

【 内 容 】

山崎:コロナ禍をピンチと捉えるのか、チャンスと捉えるのかに差が出る。今、インバウンドが再来してから一所懸命やらなければならないと思う人が多い。
ほとんどのホテルが人員削減してきたので、稼働率が上がってきても人材を確保できない。一番の問題は人手不足。これまで何とか人の確保で売り上げをカバーできていたが、全ての業種で売り上げ確保が厳しくなる。

アトキンソン:雇用助成金があったにもかかわらず雇用を切ってしまった。雇用を切られた外国人では失業率がそんなに上がっていない。そして観光産業、飲食、宿泊に移動した人は待遇を比較するようになるし、他産業へ移動した人も休暇や労働条件、待遇から、呼び戻そうとしても戻らない。一旦、切ったことにより気持ちが離れてしまった。
インバウンドの話で高級路線とは何かというと、①接客のレベルが違う ②デザイン性の問題があります。日本のモノで単価が低いのは、モノは良くてもダサいことが多い。ホテルもダサいし、ライティングもダサくて雰囲気がない。

山崎:日本はクリエイティブに対する評価が低い。ファッションの世界でもコピー商品が多い。不正競争防止法もあるが、それにかかるのは相当厳しい案件で、全部の要件を登録しなければならないし、小さい会社にとっては厳しいのが実情。
ホテルも同じだと思いますが、表層だけをコピーしても、みんな似たようなものになる。

アトキンソン:海外のホテルは部屋ごとに内装が違う。リピーターを増やしたいから。前回泊まった部屋と違う部屋に泊まる。内装を同じにすると費用は安く済むが、クオリティが上がらない。クリエティブでないところは単価も取れない。

山崎:マザーハウスは全ての店舗のデザインが違う。設計も違えば、デザイナーも違う。全部の店で個性が必要と思っているが、ファッションもほとんど同じデザインになっている。
ホテルも、できる限り宿泊代を安く抑えたいというお客様もいれば、10万円以上でも良いホテルに泊まりたいと思うお客様もいる。日本には面白い文化がある。面白いデザインがあるのではないかと思っている人への選択肢がないのが問題だと思う。

アトキンソン:世界から日本にブランドホテルが来ているが、日本にはブランドホテルはない。ニューヨークで日本資本のホテルは1軒しかない。ファッションデザイナーも昔は一杯いたけれども今はいない。

山崎:世界に知られる建築家は日本にも大勢おられるので、建築家を利用するべきだと思う。世界には建築が好きで見に来る人がいる。

アトキンソン:スターバックスが成功しているのは建築のデザイン性。

司会:今、インバウンドが伸びたとしても、人不足だし、クリエーター不足だし、経営者不足だと言うことになれば、インバウンドの機会を活かせない可能性が高いと言うことでしょうか?

山崎:差がつくことになると思います。
コピーじゃなく、オリジナルなモノを作る。デザイナーを使うので単価が高くなる。販売単価を思い切ってあげる。それが勝負。
最初からインバウンドをターゲットにして商売をすることを考えないと難しいだろう。

アトキンソン:インバウンド戦略を作る時に、日本人同士が集まって、イアンバウンド戦略はこうあるべきだとか、外国人はと言うような議論をしている。世界には80億人いるので、どこの国の誰の話をしているのか分からない。
その時にアンケート調査を徹底的にやってくださいと言った。日本人は、外国人は日本のおもてなしが凄いから来ているというが、(旅館?)部屋までくっついてくるだけで頭を下げられるのはやめてくださいが外国人の7割です。
徹底的にデータを集め、徹底的に分析して、徹底的にそれを調査し、それに基づいて設備投資したからここまで訪日客が増えた。

山崎:今の時代は50円のコロッケも食べるけど、価値あると思ったら買ってくれます。私達も創業当時の単価は1万2千円でしたが、今は3万円です。何でかというと「単価は上げていかなければならない」「良いモノを作ろうと思ったら、単価を上げようという発想を持ち続けなくてはならない」「どうやったら単価を上げられますかとお客様に問い掛け続けなければならない」ということです。
他の人にこの発想はない。日本の独特の流通環境がある問屋さんの力が一つと、二つ目は日本のリーダーが良いモノを消費していない、決裁権のある人が世界の良いモノを見ていない。世界で戦える日本のモノもあることを知らない。
日本は発想が縮小傾向にある。

アトキンソン:これまでのように人が増加している時代は、普及率を高めるためコスト削減して、値段を下げて、それ以上に売り上げを増やすという商売のやり方で良かったが、それは人口増加の時代の戦略だが、人口減少時代なのにまだ続けるのかということです。

司会:インバウンドが増えていく時に、価格はインバウンドに合わせていくのか? 日本人に合わせるのか? 二重価格にするわけにもいかないがどうするのが良いのでしょうか。

山崎:日本人は使える予算は所得と連動しているので、誰に売りたいかを決めていくしかない。
日本人と外国人に分ける必要はない。

アトキンソン:外国人の所得と日本人の所得で別々のものになっているわけではなくて、商品の階層で考えることが必要になってくる。

山崎:言語の問題とか制約条件の壁を取り除く必要はある。買ってもらえるはずだったものが買ってもらえない機会損失になる。
Aという価値のあるものを、その価値の分かる日本人もいれば外国人もいるということになります。
日本のマーケットを多様化することで、ハイエンドマーケットを作り出すことになる。