2024年(1月~12月)の旅行動向見通し
(JTBニュースリリース 2023年12月20日)
https://www.jtbcorp.jp/jp/newsroom/2023/12/20_jtb_2024-annual-outlook.html

【ホッシーのつぶやき】
JTBの2024年の旅行見通しによると、訪日外国人数は3,310万人(2019年比104%)と推計され過去最高を更新しそうです。
韓国、台湾、アメリカ、香港などはコロナ前を上回り、中国もゆるやかに増加しており、2024年は個人旅行を中心に回復が進むと想定されています。
訪日外国人意向調査でも日本が1位になるなど、訪日人気は当分続きそうです。

【 インバウンド関係の抜粋 】
国内旅行者数は対前年と同水準、海外旅行者数は同1.5倍
訪日外国人数は過去最高の3,310万人の見通し
 ●国内旅行者数は2億7,300万人(対前年97.2%、対2019年93.6%)と推計
 ●海外旅行者数は1,450万人(対前年152.6%、対2019年72.2%)と推計
 ●訪日外国人旅行者数は3,310万人(対前年131.3%、対2019年103.8%)と推計
 
訪日外国人旅行について、各種経済指標や消費者行動調査、運輸・観光関連データ、JTBグループが実施したアンケート調査などから推計したもので、1981年より継続的に調査を実施しています。推計した2024年の旅行市場規模は次のとおりです。

(図表1)2024年 年間旅行動向推計数値

<社会経済の動きと旅行を取り巻く環境>
1.2023年末までの新型コロナの状況と旅行の動き
 2020年3月に世界保健機関(WHO)が新型コロナの流行を「パンデミック(世界的大流行)」と宣言してから3年以上が経過し、WHOは2023年5月に緊急事態宣言の終了を発表しました。経済活動は世界的にほぼ新型コロナ前の状態に戻っていますが、需要の急回復などによる物価高や高金利が継続しており、生活に様々な影響を与えています。旅行に関しては、一部の国・地域を除き出入国制限は概ね撤廃され、海外旅行が新型コロナ前と同様に行えるようになりました。国連世界観光機関(UNWTO)が2023年11月に発表したWorld Tourism Barometerによると、2023年1~9月の世界の海外旅行者数が新型コロナ前の87%の水準まで回復したことを明らかにしました。ただ、不安定な国際情勢およびそれに伴うエネルギーや物価高騰が懸念材料となっています。また、回復には地域差がみられ、欧米などに対して日本を含むアジア太平洋は遅れ気味となっています。
 日本においては、2023年4月に水際対策が終了し、5月には新型コロナの感染症法上の位置づけが季節性インフルエンザと同等の「5類」に移行しました。これにより、人々の生活は概ね新型コロナ前の状態となっています。
インバウンドの回復と相まって全国的に賑わいが戻ってきています。その一方で、一部の観光地・観光エリアでは新型コロナによる環境変化に伴い、サービス業従事者の人手不足、宿泊料金高騰、オーバーツーリズムなどの問題が懸念されています。
 
2.旅行を取り巻く経済環境と暮らし向き
 日本経済は、日経平均株価が2023年5月以降3万円を上回る状態が続いており、市況は賑わいをみせています。その一方で、世界情勢や欧米の金融政策などの影響を受けており、景気の先行きが不透明な状態が続いています。IMF(国際通貨基金)が2023年10月に公表した「世界経済見通し」では、2023年の日本の成長率(予測値)は2.0%で、2022年の1.0%(実績値)を上回る予想となっていますが、2024年の成長率(予測値)は1.0%と厳しい予測がなされています。
 足元の経済状況をみると、円安・ドル高傾向は2023年に一層加速し、11月の外国為替市場では一時1ドル152円台に迫りました。これにより、輸入品価格は高騰が続き、家計に大きな影響を与えています。

(図表2)2023年の円に対する主な外国為替レート

出所:東京外国為替相場/TTM(Telegraphic Transfer Middle Rate)(三菱UFJリサーチ&コンサルティング「外国為替相場情報」より)
 
3.旅行者の現状

日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数・出国日本人数」より2023年10月の数値は推計値、2023年1~9月の数値は暫定値、2022年および2019年の数値は確定値
 
訪日旅行について、2023年は日本の水際対策終了、世界各地での新型コロナ対策の終了や緩和などにより、回復の勢いが増しています。2023年10月の訪日外客数は251万7千人で、2022年同月(49万9千人)と比べると504.7%、2019年同月(249万7千人)と比べても100.8%と単月では新型コロナ前を初めて上回りました。1~10月の累計は1,989万1千人で、2022年同期(152万7千人)と比べると1,302.3%、2019年同期(2,691万4千人)と比べると73.9%となっています*3(図表7)。国・地域別にみると、2023年1~10月の累計は多い順に韓国(552万6千人、対2019年同期107.7%)、台湾(339万9千人、同81.9%)、中国(185万4千人、同22.8%)となっています(図表8)。 
*3:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数・出国日本人数」より2023年9月および10月の数値は推計値、2023年1~8月の数値は暫定値、2022年および2019年の数値は確定値

(図表7)2023年10月単月と1月~10月(累計)の延べ宿泊人数・日本人出国者数・訪日外客数

出所:観光庁「宿泊旅行統計調査」、日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数・出国日本人数」よりJTB総合研究所作成

(図表8)国別 2023年訪日外客数と19年比(上位7か国)

出所:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数・出国日本人数」よりJTB総合研究所作成

(4)宿泊施設も活況、メルキュールホテルの一斉開業をはじめ新規開業施設が続々オープン
 宿泊施設も開業が続々と予定されています。大和リゾート株式会社は、既存のダイワロイヤルホテル23軒のうち、12軒を日本初の「グランドメルキュール」ブランド、11軒を「メルキュール」ブランドとしてリブランディングし、4月1日に全国一斉開業します。
 このほか関西エリアでは、京都市(京都府)でシンガポールに拠点を持つバンヤンツリーホテル&リゾーツの旗艦ブランド「バンヤンツリー・東山京都」の開業が春に、大阪市(大阪府)では7月開業予定のKITTE大阪内に「大阪ステーションホテル」の開業が予定されています。
 
国を挙げたオーバーツーリズム対策の推進
 新型コロナの収束後、一部の観光地では旅行需要の回復によるオーバーツーリズムが問題となっています。これを受け、政府は「オーバーツーリズム対策パッケージ」を策定するとともに、モデル事業として約20カ所を選定する予定です。支援内容は、観光地の混雑状況の配信による分散化、乗り合いタクシーの導入などを想定しています。
 一方、観光地側では、既にオーバーツーリズム対策を取っているところもみられます。例えば、京都では、拝観時間を早朝や夜にまで拡大することで時間の分散化を図っているほか、混雑状況をアプリに表示したり、設置カメラによるリアルタイムでの現場映像を伝えたりすることで混雑の緩和に努めています。

7.訪日外国人客数
2024年の訪日外国人客数は3,310万人(対前年131.3%、対2019年103.8%)
 2024年の訪日外国人客数は3,310万人(対前年131.3%、対2019年103.8%)と推計します。2023年4月の日本の水際対策終了に伴い海外から日本への旅行がしやすくなったことに加え、欧米などと比べて相対的に安い物価と円安というお得感もあり、訪日外国人客数は急速に回復しています。国・地域別にみると、韓国、台湾、アメリカ、香港などは既に新型コロナ前を上回るかそれに近いレベルにあります。2024年も一層の増加が見込まれ、2019年を上回り、過去最高になると予想されます。回復が大幅に遅れている中国については、ゆるやかながら着実に増加しており、2024年は個人旅行を中心に回復が進むものと想定されます。
 2023年10月に株式会社日本政策投資銀行および公益財団法人日本交通公社が発表した「DBJ・JTBFアジア・欧米豪訪日外国人旅行者の意向調査 2023年度版」*4によると、「次に、あなたが観光旅行したい国・地域」は日本が前年に続いて1位となっており、日本人気の高さがうかがえます(図表13)。また、日本の地方への訪問意向(訪日旅行希望者且つ訪日旅行経験者が対象)は高く、国が進める地方への分散化への期待が高まります」(図表14)。
*4:アジア・欧米豪12ヶ国・地域(韓国、中国、台湾、香港、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、アメリカ、オーストラリア、イギリス、フランス)に居住する20歳~79歳の男女かつ海外旅行経験者を対象にした調査

(図表13)次に海外旅行したい国・地域について(n=7,414、最大5つまで、上位20位)

出所:株式会社日本政策投資銀行・公益財団法人日本交通公社「DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査 2023年度版」 よりJTB総合研究所が作成。