観光事業者に聞いたインバウンド誘致の実態、コスト上昇の価格転嫁は不可避、日本旅行業協会が意識調査を実施
(トラベルボイス 2023年10月16日)
https://www.travelvoice.jp/20231016-154406

【ホッシーのつぶやき】
日本旅行業協会の「インバウンド旅行客受入拡大に向けた意識調査」によると、インバウンド観光客数は2019年比で90%が23%だという。力を入れているのは「サステナブルツーリズム」が高く29%、コスト上昇を価格転化した企業は40%、今後、価格転化検討する事業者も37%と価格転化が進む。大阪・関西万博を誘致のキッカケにする事業者は32%、関西でも42%にとどまった。
関西の事業者も誘致に消極的な理由を分析しなければならない。

【 内 容 】
日本旅行業協会(JATA)が、国内観光産業事業者や自治体に対して2023年8月に実施した「インバウンド旅行客受入拡大に向けた意識調査」の結果を公表した。訪日インバウンドが急速なスピードで復活するなか、国内の現状を正確に把握するとともに、これまで以上に国内関係事業者が協力体制を構築し、復興に向けたロードマップ作成を目指す目的で実施したもの。輸送事業者を筆頭に、全国の観光事業者から1094件の回答を得た。

サステナブルツーリズムに高い関心
まず、2019年比でのインバウンド観光客数の戻り具合(概ね2023年4~6月との比較)を尋ねたところ、全体の26%が50%未満、23%が90%程度、完全に回復して2019年水準を超えたとの回答は7%にとどまった。一方、国内旅行を含む観光全体の回復は、2019年の水準に戻っているとの回答は15%に過ぎないが、全体的にインバウンドより早く回復していることがうかがえた。

特にインバウンド観光客が多い、または多くなると想定される時期は、紅葉の秋季、桜やイースターの春季との回答がともに36%でトップ。自由回答では、年末年始やクリスマスなど長期休暇の時期に注目しているとの声もあった。旅行スタイルについては、60%の回答者は、個人レジャーと団体レジャーのインバウンド観光客を受け入れている一方で、ビジネス観光客やMICE、学生団体などを取り扱う事業者は、現時点では少数だった。

コロナ禍を経て、国内、インバウンド問わず、新たに発達した、もしくは力を入れているコンテンツは、サステナブルツーリズムへの関心が高く29%の支持を得ており、ガストロノミー(19%)、アドベンチャーツーリズム(19%)、酒ツーリズム(12%)が続いた。また、重点市場は、コロナ禍前は台湾を中心に東アジアの重要度が高かったが、将来的には東南アジアや欧米も東アジアと同程度の回答があり、受け入れ市場の拡大・分散化の動きがみられるという。

コスト上昇の価格転嫁は不可避
一方、インバウンド受け入れが再開されている現在、最大の課題であると回答。「多言語対応関係」は合計で63%、二次交通の整備不足、国際線地方路線の復便の遅れ、主要都市から地方へのアクセスといった「二次交通関係」も合計で52%に上った。人手や人材不足は賃金待遇や労働環境が主要因であり、観光産業全体で将来も含めた人員の確保が求められている。

また、受け入れをさらに伸長させていくための条件としては、「人手不足や人材不足の解消」(53%)、「国・政府の支援、官民連携」(34%)、「多言語対応の拡充」(30%)、「外国語対応スタッフの雇用」(29%)、「国際線地方路線の複便、新規航空路線の取り組み」(23%)がトップ5を占めた。

物価の上昇、高騰などにより、2019年と比較してコスト上昇を価格へ反映した企業も全体の40%を占めている。「現在価格に反映していないが、今後検討する」と回答した事業者も37%あり、値上げが業界全体で不可避の状況であることがわかる。また、宿泊事業者ではすでに70%が価格に反映済みであるのに対し、輸送事業者では19%にとどまっており、業種による格差が大きい。

なお、インバウンド誘致の起爆剤として期待されている2025年の大阪・関西万博については、開催をきっかけに誘致を検討している回答者は32%にとどまった。また、半数以上の回答者は、大阪・関西万博を契機に、現状、日本と海外の国際交流を推進する予定や計画を特に検討していないことが分かった。関西に拠点を置く事業者においても予定・計画は42%にとどまった。