【withコロナ時代の旅館経営への提言】新観光様式の発信期待 全国産業観光推進協議会 会長 須田 寛氏
(観光経済新聞 2020年7月20日)https://www.kankokeizai.com/【withコロナ時代の旅館経営への提言】新観光様式/

須田 寛氏が、原点に立ち返り「日本人による日本の観光」を提言された。
近年、旅館は4万軒縮小、ホテルは1万軒超の増加し、客室稼働率はホテル80%に対し、旅館40~50%と大差が生じ、転廃業により、貴重な観光インフラと観光資源を失った。
旅館などが地域の事業者が連携して、共同仕入れ、共同販売の仕組みに取り組み、地域全体における新しい営業スタイルを確立し、収支をプールする仕組みも作る必要があるという。国や行政は、規制緩和と公的支援により、この体制を推進する必要があると説く。
須田 寛氏は89歳になられていますが、かくしゃくとされており、私達NPOも設立以来お世話になっています。『観光のひろば』でも数回講演いただきました。今回の提言も心に刻みたいと思います。

【ポイント】
国の非常事態宣言も解除され、各観光地に少しずつ観光客の姿が見られるようになってきた。
しかし、コロナ禍は今も続いており、国際・国内とも「観光」のV字回復は厳しいと考えざるを得ない。
このため、当面の「観光」は今一度原点に立ち返って、「日本人による日本の観光」に取り組む。
すなわち日本の美しさを改めてじっくりと見つめ直すことを念頭に置く、いわば「新ディスカバージャパン」(日本再発見の旅)を提案していきたい。

1、旅館・ホテル稼働傾向から考える
近年、旅館の漸減(4万軒縮小)、ホテルの急増(1万軒超)がみられ、そこへ民泊が参入してきた。
客室稼働率はホテル80%、旅館40~50%と大差が生じ、旅館の転廃業が相次ぎ、貴重な観光インフラと観光資源を失った。
業界主導で、まず規制緩和を含む宿泊業全体の新営業秩序(役割分担)を確立、利用格差を是正して需給緩和を図ることが急務と考えられる。

2、旅館・ホテルのサービス業を考える
旅館の需要減退は、(1)中小企業の多い旅館経営の近代化に遅れがみられる(2)一部に古い商習慣が残る等が指摘される。1泊2食付きの宿泊契約方式もその例である。泊食分離の宿泊契約が通常の外国人客や邦人ビジネス客の利用を妨げており、この是正も急がれる。
旅館にとって夕食は目玉商品であり、主な収益源である。また、それは食材納入等のウエートから地域経済化にも大きく関わっている。この是正は、旅館の営業努力が期待される。

さらに地域の旅館等さまざまな供食業者が連携して、共同仕入れ、共同販売等の仕組みを地域ごとに取り組み、収支をプールするような流通のシステムチェンジも検討する必要があり、そこに公的支援が求められる。すなわち、個々の旅館・ホテルではなく、地域全体の課題として幅広い取り組みによって泊食分離を実現すべきだと思う。

人手不足のため、近年旅館・ホテルの中途半端なサービスが目立つようになった(供食方式、フロントの接遇方式、清算方式等)。ホテルにおけるロボットや機器による徹底した省力化サービスから人的なもてなしによるきめ細かい伝統的な旅館のサービスまで、業種別にさまざまなサービス基準(段階等級別)を決め、その内容を明らかにして顧客の選択を待つべきだと思う。

徹底した省力型サービスは気を使わなくてよいという顧客も多くいる一方、高度なサービスで旅館の印象を心に残したい顧客もいる。しかし、「もてなしの心」がこもっていればどんなサービスでも十分な説明があれば受け入れられると思う。
ウイズコロナの時代、「新観光様式」のモデルを旅館・ホテルから率先発信されることを心から期待している。