「スラムダンク」聖地に人が殺到…観光地の住民も頭を抱える“オーバーツーリズム” 星野リゾート代表の考える“解決策”【news23】
(TBS NEWS DIG 2023年8月日)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/666632?display=1

【ホッシーのつぶやき】
7月の訪日外国人は232万人、コロナ前の8割まで回復したが、各地でオーバーツーリズムが再燃している。しかし外国人だけでオーバーツーリズムが起こるのではない。観光客の8割が日本人です。
オーバーツーリズムは、総観光客数を減らすしかないので、①地方への観光 ②時間をずらした観光 ③入場予約(入場制限)などが始まっている。地域によってできる対策は違うが、早急に対策を検討しなければならない。

【 内 容 】
観光客が多く訪れることで地元住民の生活に影響を及ぼす“オーバーツーリズム”。7月に日本を訪れた外国人旅行者は232万人と、コロナ禍前の8割に迫る水準まで回復したことが明らかになり、対策に乗り出す自治体も出てきています。

中国政府が日本への団体旅行を解禁
東京・銀座の免税店で、大量の買い物をしているのは、中国人観光客。
中国からの観光客「(予算は)40万円以上です」
中国からの観光客「80万円から100万円です」
ラオックス銀座コア店 蔡節宝 店長
「やっと来ましたねって感じですね。売り場もいっそう賑やかになる」
中国政府は、コロナ禍で停止していた日本への団体旅行を解禁。今後、さらなる中国人観光客の増加が見込まれています。

車道に飛び出す外国人観光客

神奈川・鎌倉市では…
パトカーのアナウンス「(英語で)写真撮影の際、道路に飛び出したり立ち止まったりすると大変危険です」

英語のアナウンスが流れる中、踏切が下りると、一斉に人が出てきて写真を撮り始めました。アニメ「スラムダンク」の聖地となっている鎌倉市の踏切です。

観光客が車道に飛び出すなど、危険な行為に住民が困惑しています。
周辺の建物には…
「居住者以外は立ち入り禁止ですという張り紙があります。中国語、英語でも書いてありますね」

地元住民「車で通るときは、人をひきそうになってしまうし、とっても騒がしくて困ってます」
地元住民「よそから来る人たちのマナーがね…地元の人たちのことを考えないんだよね」

ーー観光地として地元が栄えることは喜べている?
地元住民「喜べていない」
観光客が押し寄せ、騒音や渋滞、ゴミなど、住民生活に支障が出る「オーバーツーリズム」が各地で問題となっています。

あふれかえる路線バス、通勤電車、ゴミ箱

富士山でも大混雑!
8月13日、5合目にある仮設休憩所のプレハブの下で、火を使って料理をする外国人の姿が。手には、タバコも持っています。このときプレハブの中は、シャトルバス待ちの客で満員だったといいます。

京都駅前は、バス待ちの大行列。
平日の電車も、通勤ラッシュではない時間帯にもかかわらず、身動きが取れないほど。駅も大混雑です。
通勤客「人が多すぎるというか混みすぎるね。困りますよ。我々の生活のリズムが狂うし」
記者「ゴミがあふれかえっています。入りきっていないっていうレベルじゃないですね」

対策は、時間と場所の“分散化”
こうした中、京都市がオーバーツーリズム対策として取り組んでいるひとつが、夜や早朝の観光を充実させる「時間の分散化」です。
豊臣秀吉の妻「ねね」ゆかりの高台寺。夜の庭園では、プロジェクションマッピングが行われていました。また、お茶会を、午後5時半~6時頃の夜の時間帯に開催。
さらに、18日まで、拝観の受付時間を、午後9時半まで延長するなど、時間の分散に協力しています。
兵庫からの観光客「ゆっくり見られるので、これも夜だからなのかなと思います」

もうひとつの対策が「場所の分散」です。

ホームページ上で日時や天気を入力すると、人気エリアの混雑状況を、AIが予測するシステムや…
市内10か所にライブカメラを設置し、観光客自身がスマホなどで混雑具合をリアルタイムで確認できるようにしています。
京都市観光協会 堀江卓矢さん
「各自の判断で、訪れる場所や時間帯を変えていただくように後押しをしていく」

大型連休も分散化するべき
一方で、星野リゾートの星野佳路 代表は、日本におけるオーバーツーリズムの問題は、外国人観光客の増加だけではないと指摘します。
星野代表「日本全体の観光需要、観光消費額全体の80%以上が、実は日本国内に住んでいる方々の日本観光なんですね。ですから日本国内に住んでいる方々の休みが集中して、そのときに一気に需要が増えることによって起こされている、一時的な時期によるオーバーツーリズムの問題は、確かに大きな課題のひとつだと思っています」
その上で、星野代表が長年、政府に提言し続けているのが「休みの分散」です。
星野代表「実は、観光先進国と言われている国々では、大型連休を分散化して取るという取り組みが、もう長く行われています」

ーー日本で休みを分散化すると、どういった案が考えられる?
星野代表「例えば、日本の国内全体を、2500万人ずつの人口の地域に分けて、その1~5番目の地域が、1週間ずつずらしてゴールデンウィーク、またはシルバーウィークを取っていく。これがひとつの策です。事業者側からしても、安定してサービスを提供できることになりますし、何といっても、旅行者にとって、より快適な旅行を安く提供できる」

東京・大阪・京都・北海道・沖縄以外の“地方”への分散化を
山本恵里伽キャスター:
問題となっているオーバーツーリズムですけれども、どうすれば解消できるのか。
星野代表は、このオーバーツーリズムが起きている場所は、限られていると指摘しているんですね。東京・大阪・京都・北海道・沖縄の5か所に、訪日外国人客の65%、半分以上が集中しているそうなんです。ですので、もっと“地方”に分散してもらうのが課題だとも指摘しています。
例えば、自然を見たり、体験したりする自然観光を強化することによって、地方に来てもらえる取り組みにつながるのではないか、と指摘しています。
小川彩佳キャスター:
日本に魅力を感じる人が多いというのは、ありがたいこと、喜ばしいことですから、それをどう分散させていくのかというところですね。
慶應義塾大学 宮田裕章 教授:
インバウンド観光というのは、これからどんどん伸びていくと考えられる。ただ一方で、これが加速しすぎると、地域の文化も破壊してしまう。
そういう意味では、コロナ前から、実は訪日外国人の方々が、日本の新しい魅力を発見することが始まってるんですよね。高尾山というものの魅力を発見して、非常に多くの外国人が訪れるようになりましたけれども、それはフランス人が再発見した。それ以外にも好事例が生まれ始めている。例えば、ニセコっていうのは、パウダースノーを愛する世界中のスキーリゾートの人たちが来ている。あるいは、直島というようなところで、いろいろなコミュニティが生まれている。

みんながみんな同じところにラッシュするというよりは、デジタルの力でいろいろな人たちをつなぎ、自然だけじゃなくて、食だったり、祭りだったり、アニメだったり、歴史だったり、アートだったり、そういう多様なコミュニティを作りながら、地域の人たちの誇りというか、住む人たちの未来とつなげていくってことが必要なのかなと思います。